【元モーニング娘。の吉澤ひとみさん飲酒ひき逃げ事件で逮捕】重罪の可能性も?今後の流れと刑事責任について解説しました

コラム

また衝撃的な事件が起きました。

元モーニング娘。の吉澤ひとみさんが、平成30年9月7日午前7時頃

中野区の路上で、飲酒で酒に酔った状態で自動車を運転して、

自転車に乗った女性に衝突し、そのまま逃走したとの被疑事実で逮捕されたとのことです。

※赤信号無視での事故との報道もあるので、以下、その点を加筆しています

現在は、原宿署にいるようです。(原宿署は女性用の広い勾留施設があります)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180906-00010024-fnnprimev-soci

 

(日刊スポーツさんから写真をお借りしました)

 

報道ベースで、吉澤ひとみさんに該当する可能性のある罪名として考えられるのは以下のものです。

 

 

①過失運転致傷罪

まず自動車を衝突させて人にけがをさせた部分については過失運転致傷罪

自動車運転処罰法第5条(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)

自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

 

②飲酒運転(酒気帯び運転、酒酔い運転)

次に飲酒運転については道路交通法違反となります

飲酒運転については、重い酒酔い運転と、比較的軽い酒気帯び運転があります

酒酔い運転(まっすぐ歩けないなど正常な運転が不可能な場合)は道路交通法65条、107条の2①違反となり

法定刑は5年以下の懲役または100万円以下の罰金

第百十七条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
一 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第一項の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔つた状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。以下同じ。)にあつたもの

酒酔いの程度には至らず

呼気アルコール濃度が1リットルあたり0.15㎎以上の場合は道路交通法65条、107の2の2③違反の酒気帯び運転となり

法定刑は3年以下の懲役または50万円以下の罰金

第百十七条の二の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
三 第六十五条(酒気帯び運転等の禁止)第一項の規定に違反して車両等(軽車両を除く。次号において同じ。)を運転した者で、その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあつたもの

 

 

③ひき逃げ

そしてひき逃げ行為に関しては、ひき逃げ犯の運転によって死傷が生じているので

道路交通法違反(72条、117条Ⅱ)で

法定刑は10年以下の懲役又は100万円以下の罰金(禁錮はない)

なお、事故に気付いていなかったのであれば、この犯罪は成立しませんが

自ら110番をしているようなので、自己の認識はあるのだと思います

第百十七条 車両等(軽車両を除く。以下この項において同じ。)の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があつた場合において、第七十二条(交通事故の場合の措置)第一項前段の規定に違反したときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の場合において、同項の人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

 

これらを同時に起こしているので併合罪(刑法45条)となります

しかし、吉澤ひとみさんに該当する可能性のある罪はこれだけではありません。

もっと重い罪に問われる可能性があります

 

④危険運転致傷罪

朝までお酒を飲んでいたのだと思いますので、飲酒量は相当な量だった可能性があります

その場合、アルコールの影響によって、正常な運転が困難な状態であったのであれば

自動車運転処罰法の危険運転致傷罪にもあたる可能性があります

その法定刑は15年以下の懲役と相当重いものになります

(危険運転致死傷)
第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為

 

※  赤信号無視の場合も危険運転致傷罪になります

赤信号無視自体は道路交通法違反ですが

①ことさら赤信号無視をして(見落としではなく、わざと無視)

 

②重大な交通の危険を生じさせる速度で車を運転して事故を起こして怪我をさせた場合

は危険運転致傷罪に該当します

 

 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

重大な交通の危険を生じさせる速度

というのは、文言だけ見ると時速100キロ超えのようにもみえますが、

時速20キロでも該当性ありと認められた前例がありますので

徐行でなければ該当する可能性はあると思います

 

 

⑤アルコール等影響発覚免脱罪

事故を起こしたことに気付きながら、現場を逃走したのであれば

それは自身が犯人であることを隠滅するためか

飲酒運転であることをごまかすためと考えられます

 

前者であれば単なるひき逃げですが

後者の目的で、なおかつ実際に事故後に飲酒をしたり、大量の水を飲んでサウナに行きデトックスを試みるなど

体内のアルコール量を減少させるような行為に至っていた場合は

自動車運転処罰法のアルコール等影響発覚免脱罪にあたる可能性があります

 

報道によりますと、約15分後に110番をしたとのことですが

もしこの間に飲酒をしていたなどの事情があれば、犯罪成立となり得ます

 

この法定刑も12年以下の懲役と相当重いものになります

(過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱)
第四条 アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、十二年以下の懲役に処する。

 

どのような事故状況だったのか

摂取したアルコールの量はどれくらいか

体内からどれくらいのアルコールが検出されたのか

アルコールの影響がどのくらいあったのか

時速何キロで交差点に入ったのか

わざと赤信号を無視したのか

なぜひき逃げをしたのか

現場を去った後何をしていたのか

によって罪名がかなり変わってくるので、その事実関係が重要になります

 

 

なお、今後の身柄拘束についてですが

一般的なケースとして

ひき逃げは通常、逮捕されますし、勾留も認められる可能性が高いです

現に逃げている以上、逃亡防止という逮捕勾留の必要性が認められやすいのです

しかも飲酒運転で赤信号無視がついてくると、より強い非難が加えられますので

勾留まで行ってしまう可能性は高いでしょう

 

とはいえ、弁護士が早期に介入して、家族などの身柄引受書などを集め

また、子どもが小さいことや、前科がないこと、職場がしっかりしていること等

被疑者に罪証隠滅や逃亡の可能性のないことなどについて裁判官を説得できれば、

逮捕だけで、勾留はされない可能性もあります

つまり、弁護士の力量が問われます

 

吉澤ひとみさんについては

家族もあり、子もいる状況で、なおかつ有名人ですから

逃亡の可能性は乏しいでしょう

 

しかし、昨年も事故を起こしているようですし

職場も恐らく解雇になってしまうので、これらの事情は勾留が認められる方向に働くでしょう

 

また、ひき逃げ後の状況が重要な点になりますので

ひき逃げ後の行動について、客観的資料などである程度早期に裏付けがとれるのであれば

つまり、ひき逃げの後に、飲酒をしたり、サウナなどに行っていないことが確認できるか

逆に飲酒をしたり、デトックスのような行為をしていることを自白し、その裏付けもあるような状況であれば

罪証隠滅の恐れもないということで

勾留されない可能性もあると思います

事故後、110番通報するまでの15分の間に何をしていたのかによるのではないかと思います

 

次に、刑事裁判になるかどうかという点ですが

被害者がある事件なので、被害者との示談ができるかどうかという点が非常に重要なポイントになってきます

過失運転致傷罪だけであれば罰金で済む可能性もあり

示談ができていれば不起訴もあり得ます

 

もっともひき逃げの場合は、示談で来ていても起訴される可能性はあります

しかも、飲酒運転(酒気帯び、酒酔い)が付いているのであれば、

起訴される可能性は高いと思います

 

一方、危険運転致傷罪(アルコールの影響、赤信号殊更無視)やアルコール等発覚免脱罪になる場合は

起訴される可能性は非常に高いと思います

 

昨年にも自動車同士の交通事故を起こしているとのことなので

そちらでどのような処分になったのかによりますが

(罰金を受けているのであれば同種前科ありということになります)

短い間に2回事故を起こしているということは、処分を重くする方向に働く事情になると思います

つまり起訴されて刑事裁判になる可能性が高まるということです

 

最後に、予想される刑ですが

そもそも事実関係がわかりませんし

起訴もされていませんので、同種事案の一般論としていいますと

過失運転致傷罪+酒気帯び運転+ひき逃げ+赤信号殊更無視であれば起訴されて執行猶予の可能性が高いと思います

しかし、危険運転致傷罪やアルコール等発覚免脱罪の場合は、一発実刑の可能性もそれなりにあると思います。

 

元とはいえ、モーニング娘。という国民的グループの元メンバーの刑事事件ですので

非常に社会の注目は高いですし

その影響力も大きいと思います

 

また直接の関連性はありませんが

2007年に弟さんを交通事故で無くされているという事情もあるようなので

交通事故や運転についてどのように考えているのかという部分も

裁判では注目される部分なのかもしれません

 

事件に関する事実関係と、

本人の弁解状況等に注目していきたいと思います。

 

abemaTV「有罪率99.9%」の刑事裁判で無罪連発 “勝訴請負人”弁護士の信念とは

アトム市川船橋法律事務所弁護士法人

市船への招待状

 

 

なお補足ですが

行政処分である減点と免許再取得までの欠陥期間は以下のとおりです

 

ひき逃げ事故  減点35点 欠陥3年

ひき逃げ傷害事故 減点48点 欠陥5年

酒酔いひき逃げ傷害事故 減点83点 欠陥10年

酒気帯びひき逃げ傷害事故 体内アルコール度数が0.25㎎以上なら減点73点 欠陥10年

0.15~0.25㎎なら減点61点 欠陥8年

 

 

 

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