【札幌スプレー缶ガス爆発炎上事件】アパマンの刑事罰と損害賠償責任はどうなる?

コラム

今月16日に札幌で発生したスプレー缶ガス爆発炎上事件

この事件で、アパマンの従業員らがどんな刑事罰を受けるのか

どのような損害賠償責任を負うのか

などについて簡単にご説明させていただきます

 

 

【刑事罰は?】

一番適用される可能性が高い犯罪は

重過失激発物破裂罪(刑法117条の2後段、三年以下の禁錮、150万円以下の罰金)です

[box] (激発物破裂) 第百十七条 火薬、ボイラーその他の激発すべき物を破裂させて、第百八条に規定する物又は他人の所有に係る第百九条に規定する物を損壊した者は、放火の例による。第百九条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第百十条に規定する物を損壊し、よって公共の危険を生じさせた者も、同様とする。 2前項の行為が過失によるときは、失火の例による。 (業務上失火等) 第百十七条の二 第百十六条又は前条第一項の行為が業務上必要な注意を怠ったことによるとき、又は重大な過失によるときは、三年以下の禁錮又は百五十万円以下の罰金に処する。[/box]

 

 

100本もの未使用スプレー缶のガスを室内で抜いてガスを充満させたという話ですので

重過失(凡ミス)ということにはなると思います

 

 

なお、今回はさすがにわざとガス爆発を起こしたわけではないので

故意犯の

激発物破裂罪(117条、死刑、無期懲役あり)や

ガス漏出致死傷罪(118条2項、長期20年)

にはなりません

 

 

あと理屈的には業務上過失致傷にもなり得ると思います(211条、5年以下の懲役・禁錮、100万円以下の罰金)

そして、責任を負うのはスプレー缶からガスを抜いた従業員と

それを指示した直接の上司(共犯)となり

アパマン自体は刑事罰は受けません

 

 

【民事上の責任は?】

 

①人の怪我分

20人以上の怪我人が出ていますので

入通院費用、その期間に応じた慰謝料

※慰謝料は入通院期間に比例します

後遺症が残った場合は後遺症の慰謝料や

後遺症で働けなくなったことによる逸失利益

その他通院交通費や休業損害を

支払わなければならなくなります。

 

怪我が大きく、後遺症が残るレベルであれば数百万円に及ぶ賠償額になり得ます

 

 

②建物の損壊

建物内で爆発してかなり大きな火災になっています

ですので、建物の解体費用と再築費用は損害になります

これはかなり大きな金額になり、数千万円になり得るでしょう

 

 

もっとも、ここで賠償される額は、燃えた時点での建物の価格なので

新築なら高額になりますが

古い建物だと数百万円にしかならないこともあると思います

 

 

解体に関しては、柱が地中深くまで入っていると

解体費用だけでも500万円を超えることもあります

他にも建物内の備品なども賠償の対象になります

 

 

③営業損害

この爆発で、隣の居酒屋さんは

忘年会~新年会という一年で一番の書き入れ時をロストしたことになります

この分の営業損害も賠償しなければならなくなります

 

 

この計算は複雑になりますが

昨年から営業しているのであれば、昨年の収益が1つの基準になると思います

 

 

④失火責任法の問題は?

失火責任法という法律が、火災による賠償の場合に壁になります

この法律はたった1条しかない法律で

その規定は簡単に言いますと

「失火」(ミスで火を出しちゃった場合)は賠償責任を負いません

でも、重過失の場合は賠償責任を負って下さい

という内容です

 

 

日本では木造家屋が多かったので、

一度火が出てしまうとかなり広範に燃え移ってしまいます

その結果、到底賠償することができないレベルの賠償額におよぶケースが多いため

その責任を限定した法律になります

 

 

もっとも今回は失火ではなく爆発なので、恐らく失火法の適用はないと思われます

 

 

⑤火災保険などの利用は可能?

自動車事故などの場合、被害者の方は

加害者の任意保険などを使って損害の補填を受けます

では火災の場合はどうなのか

 

 

通常、建物を買ったり借りたりする場合は、火災保険に入ります

アパマンも入っているはずです

 

 

では、この火災保険を使って、

居酒屋さんや、ガラスが割れた近隣住民は賠償を受けられるかというと

必ずしもそうではありません

 

火災保険は、施設賠償特約のようなものに入っていないと、

保険加入者(加害者)以外の被害者には保険金は支払われません

アパマンが被害者への賠償金を支払えないことはないと思いますが

もし支払えない場合、保険も効きませんので

被害者が泣き寝入りになってしまう可能性もあります

ですので、今回はアパマンが、施設賠償特約など、

被害者に賠償できるような保険に入っているかがキーになると思います

 

 

なお、火災保険の場合

自動車保険と違って、使ったからといって等級ダウンになって保険料が上がるというものではありません

ですので、ご自身で火災保険に入られている方は

火災保険を利用していただくのが良いかと思います

 

 

【ハウスクリーニングをしていない問題は?】

昨日の報道で

今回のスプレー缶は、本来であれば顧客の住居の除菌やクリーニングに使うものだったとのことです

しかし、理由はわかりませんが

顧客からお金はもらいつつ

除菌やクリーニングを行っていなかったとのことです

 

 

忙しくてやりたくてもできなかったという話なら

お金の返金などの対応を民事的に行えば足りますが

 

もし初めからクリーニングをするつもりがなかったのにお金を徴収していた場合は

詐欺罪になり得ます。

(刑法246条、10年以下の懲役)

 

 

被害が多数に及び、社会的にも大きな影響がある事件です

今後のアパマン側の賠償対応と

刑事責任に注目していきたいと思います


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