【宮古新報の解雇と会社清算】従業員は会社存続を争える?

コラム

宮古島市で住民の約半分の方々が購読している宮古新報

その社長が1月10日付で全社員を解雇し

会社の清算手続きを開始したということで騒動になっています

https://www.rbc.co.jp/news_rbc/%E5%AE%AE%E5%8F%A4%E6%96%B0%E5%A0%B1%E3%83%BB%E7%A4%BE%E5%93%A1%E8%A7%A3%E9%9B%87%E3%80%8C%E7%B5%B6%E5%AF%BE%E3%81%AB%E8%A8%B1%E3%81%9B%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%8D/

 

この事件のポイントは

①会社経営者が会社清算を決定し、手続きを開始した際に、従業員がそれを阻止できるか

②解雇の有効性

③社長(代表取締役)のセクハラパワハラ等と会社の清算との関係

④今後「宮古新報」という名前が使えるか

 

 

【①会社経営者が会社清算を決定し、手続きを開始した際に、従業員がそれを阻止できるか】

会社の日々の業務の決定は基本的には取締役などの役員が行います

もっとも、会社にとっての重要な事項の決定と

役員の選任・解任を行うのは株主です

 

つまり、会社の経営方針等に対して、従業員は事実上意見を言うことや、陳情をすることはできても

決定権はありません

 

宮古新報の代表取締役の座喜味社長が

恐らく宮古新報株式会社の株式の大半を持っているのではないかと思います

そして、その他の株式も親族が持っていると思います

 

そうなると、株主として

座喜味社長及びその親族が「会社の破産申立をします」「会社閉じます」「会社売ります」といったら

従業員は、「勘弁してください」という陳情はできても

これを阻止する実力行使はできません

 

だから労働組合も団体交渉の申入れという「協議の場」を求めることしかできません

 

そして、座喜味社長は会社売却を考えていないとのことなので

会社は清算の方向に向かって粛々と進むことになります

 

なお、報道によると会社が業績不振で

座喜味社長から会社に対する貸付等も相当な額に及んでいるとのことなので

宮古新報株式会社は債務超過に陥っている可能性があります

 

会社が債務超過であっても、業績好調で会っても

株主が会社を清算することや、会社を売却することを決めてしまえば

従業員は何も言えません

 

債務超過だったかどうかという部分は

次の解雇の有効性に影響してきます

 

 

【②解雇の有効性】

報道を踏まえると経営赤字を理由に解雇したとのことなので

「整理解雇」

をしたということになります

(解雇には他に懲戒解雇、諭旨解雇、普通解雇などがあります)

 

会社が本当に債務超過であれば、

この整理解雇にも法律上の理由があることになるため

適法な措置ということになります

 

従業員としては

整理解雇として有効だったのかどうかという点を争う余地はあります

 

ただ、整理解雇が無効だったとして

従業員としての地位が確認されたとしても

 

会社が清算手続きに入っているのであれば

会社に対する慰謝料請求や未払賃料請求などというかたちで金銭請求はできますが

会社の存続自体を義務付けることはできません

(清算結了の時期が遅くなることはあるかもしれませんが)

 

しかも、実際、会社にお金がなかった場合

会社からの賠償は受けることが出来ず

この金銭請求も絵に描いた餅になってしまいます

(代表取締役を別途訴えることはできます)

 

 

【③社長(代表取締役)のセクハラパワハラ等と会社の清算との関係】

報道ではセクハラなどがあった時期がわかりませんが

セクハラ被害の場合、

会社代表者を訴えるか会社を訴えるかの2択になります

 

会社代表者を不法行為(民法709条)で訴える場合は、消滅時効は3年なので

3年以上前の被害については、請求はできないことになります

 

一方、会社に対して、職場の環境調整義務違反などを根拠にした賠償請求をする余地もあります

この根拠の場合の消滅時効は10年と長いですが

 

上記と一緒で、

会社にお金がなければ、十分な賠償は受けられません

 

また、仮にセクハラの事実などがあったとしても

会社の清算手続自体を止めることはできません

(上記同様、清算結了の時期がずれこむことはあるかもしれませんが)

 

それはそれ、これはこれということになります

 

【④今後「宮古新報」という名前が使えるか】

従業員の方々は、「宮古新報」という商標の利用継続を希望するかもしれません

しかし、その利用も難しいと思います

 

この「宮古新報」という商標について

そもそも商標登録しているのか

しているとして誰が商標権を持っているのか

というところが問題になりますが

 

恐らく商標登録はしていると思います

もししていなければ、使える余地はあります

(不正競争防止法違反になることもありますが)

 

そして商標権者は、宮古新報社か座喜味社長個人でしょう

 

そして、宮古新報社に商標権があった場合

会社の清算に伴って、この権利を座喜味社長が個人で取得する可能性もあります

(会社を売らないと考えているようなので、商標は守るはず)

 

したがって、基本的には商標を使うことは難しいと思います

 

 

【最後に】

会社の破産や清算で困ってしまう従業員の方々を僕は多く見てきました

 

今回の件は、宮古新報社が本当に債務超過なのであれば、

仕方のない面があるので(社長が一番経済的損失を被ることになりますから)

従業員の方々は

宮古新報社を相手に裁判をすることも一つの選択してですが

それよりも、新たな媒体の製作に着手される方が

ポジティブな選択肢のように思います

 

abemaTV「有罪率99.9%」の刑事裁判で無罪連発勝訴請負人弁護士の信念とは

アトム市川船橋法律事務所弁護士法人

市船への招待状

 

 

関連記事

株主代表訴訟の構造や裁判費用、弁護士費用について

株主代表訴訟の構造や裁判費用、弁護士費用について

続きを見る

回転寿司テロのリスクを弁護士が解説!

回転寿司テロのリスクを弁護士が解説!

続きを見る

弁護士が教える反対尋問のポイント

弁護士が教える反対尋問のポイント

続きを見る