【関与したNGTメンバーも裁判に引っぱりこまれる?】AKSの加害者提訴の影響・真意と法律問題について解説しました!!
先月、山口真帆さんがNGT48からの卒業を発表しました
被害に遭われた山口さんがNGTを去るという結果や
同時に卒業するメンバー2人とあわせた3人だけの卒業コンサートという情報について
ネット上には多くの意見が寄せられています
その後、新たな動きがありました。
NGT48の運営会社AKSが
山口さんを襲撃した男性らを相手に損害賠償を求める民事訴訟を提起したとのことです
https://www.sankei.com/affairs/news/190524/afr1905240039-n1.html
この訴訟提起は
山口さんファンからのクレーム対応やNGT48のイメージ回復も目的
なのかもしれませんが
本当にそのような結果に至るかどうかは、疑問です
それは、民事訴訟の提起には以下の4つの問題点があるからです
1 そもそもAKSの賠償が認められるかという問題
2 事件に関与したNGTメンバーが裁判に参加せざるを得なくなる可能性があるという問題
3 公開の法廷でNGTメンバーが証人尋問を受けなければならなくなる可能性があるという問題
4 裁判をどうやって終わらせるのかという問題
民事訴訟法にも関連する専門的な話になってしまいますので、その部分は簡単にして
以下、ご説明させていただきます。
1 そもそもAKSの賠償が認められるかという問題
これは山口さんへの暴行とAKSの損害には因果関係はあるの?という問題です
訴状を見なければ、AKSが加害者らにどのような損害費目でいくら請求しているかわかりませんが
直接の被害を受けている山口さんが賠償を求めるのではなく
山口さんが被害を受けたことで間接的に損害を受けたとAKSが賠償を求めることには
因果関係論などの面で、主張も立証もかなりのハードルがあります。
山口さんに関しては、加害行為自体が認められれば
『暴行 ⇒ 精神的苦痛、受傷 ⇒ 慰謝料、治療費』
と因果関係が比較的すっきりしています
しかし、AKSに関しては
『暴行 ⇒ 山口さんの受傷
⇒ NGTのイメージ低下
⇒ スポンサー・新潟県が距離を置く、番組出演等見合わせ、マスコミ起用控え
⇒ 逸失利益(得られるはずだった売り上げが入らない)』
という因果関係の図式が想定されますが(訴状とは違うかもしれません)
この因果関係は簡単には認められないと思います
『山口さんの受傷 ⇒ NGTのイメージ低下 』
ここはファンの方々は言いたいことが多いと思います
NGTのイメージ低下は
今回の被害によって山口さんが受傷したことが原因ではなく
AKSの対応についての山口さんの告発や
第三者委員会の調査結果を踏まえたAKSの対応が原因だ
と加害男性側は反論するでしょう
そして、このAKSの対応をみた
「AKS批判、山口さん擁護」という多くの世論が
『スポンサー・新潟県が距離を置く、番組出演等見合わせ、マスコミ起用控え』
という結果を招いたという反論には
相応の説得力があると思います
その結果、加害男性による加害行為と、被害結果との間の因果関係(相当因果関係)は否定される可能性も十分にあると思います
AKS側の代理人はこの点はかなり悩むのではないでしょうか
2 事件に関与したNGTメンバーが裁判に参加せざるを得なくなる可能性があるという問題
ここが今回のケースの特徴的な問題だと思います
訴訟告知と訴訟への参加
民事裁判で、裁判の当事者(原告・被告)は
訴訟の結果に利害関係を有する第三者に対して
裁判に参加しろと告知することができます(訴訟告知 民事訴訟法53条)
この告知を受けた第三者は
これを受けて裁判に参加するか(補助参加、民訴42条等)、無視をするかの2択になりますが
例え訴訟告知を無視をしたとしても、
裁判所の判断には拘束される
つまり後に「その判断は間違っている」と争えないことになります
NGTメンバーへの訴訟告知の可能性
今回の事件で
世論が一番注目しているのは
『山口さん以外のNGTメンバーが関与していたかどうか』
ではないでしょうか
そして、今回の損害賠償の裁判でもこの点は非常に重要な争点になります
損害賠償の加害者が複数いる場合
損害賠償義務は連帯債務になりますので、
加害者間で損害を分担することになります
つまり、加害者側にとっては
加害者が提訴した2人だけと裁判所に判断されるのか
NGTの中にも情報提供という幇助行為や
犯行を唆す発言をしていた共犯者がいたと判断されるのか
は、賠償額の最終的な負担額を決めるにあたって非常に重要な事実関係になります
それゆえ、
加害者2名の代理人弁護士は
加害者から得た情報を踏まえて
関与したNGTメンバーに対して訴訟告知をすることを検討するでしょう
そして、訴訟告知がなされた場合
そのNGTメンバーは
反論せずに無視をしたり
自分が関与していないと反論を訴訟でしても、これを裁判所が認めなければ
「あなたは事件に関与した」
という裁判所の判断に拘束されることになります
であれば、現時点では、誰も事件への関与を認めていないわけですから
もし訴訟告知をされたのであえば
そのNGTメンバーは当然のことながら
裁判に出て本気で戦わなければならなくなるでしょう
NGTメンバー訴訟参加の影響は?
もしNGTメンバーが訴訟告知を受け、裁判に参加することになれば
・原告被告どちらにつくのか
・どのような主張をするのか
・証人尋問等を受けるのか
などに注目が集まります
その結果、NGTを巡る裁判沙汰はずっと報道されることになりますし
この裁判が終わるまでは
『スポンサー・新潟県が距離を置く、番組出演等見合わせ、マスコミ起用控え』
という状態から抜けられないでしょう
さらには、裁判関係書類(訴状、準備書面など)が公開されることになれば
それこそ、回復不可能なNGT48のイメージ低下を招く可能性があると思います
3 公開の法廷でNGTメンバーが証人尋問を受けなければならなくなる可能性があるという問題
今回の山口さんの事件が起きるに至る経緯やメンバーの関与は
この損害賠償訴訟では最も重要な事実関係であると思います
それゆえ、上述の訴訟告知がなされなかったとしても
事実関係を明らかにするために必要があるとして
当事者のいずれかが
山口真帆さん本人や関与したNGTメンバーの証人尋問請求
をする可能性があります
この証人尋問は、原則的には公開の法廷で行われますので
相当注目を集めることになるでしょう
また、NGTの残留メンバーが法廷に呼ばれること自体や
山口さんが法廷で事実関係を改めて証言することも
NGTのイメージ低下をもたらす可能性はあると思います
4 裁判をどうやって終わらせるのかという問題
この問題は、この裁判の真の目的と置き換えてもいいかもしれません
訴えられた加害者2名側は
非常に高額になると思われる賠償責任を負わないようにするため
また、刑事責任についてぶり返されないようにするため
しっかりと法的な対応をしてくるでしょう
その一方で、上述のとおり、AKSが加害者2名を提訴することには
非常に多くのリスクが伴っています
それゆえ、僕個人としては
・山口さんファンのクレーム対応
・他のファンの不信感を払しょくするために加害者に厳しい姿勢を示す
・NGT48のイメージの回復
のために、加害者2名を法廷に出して全容解明することが目的だとすると
やぶ蛇の効果しか得られない訴訟
なのではないかと思います
しかも、そもそも加害者2名は法廷で真実を語るとは限りません
民事訴訟の証人尋問においても
自分自身が刑事訴追を受ける可能性のある証言は拒否することができます
(自己負罪拒否特権)
つまり、加害者2名は刑事訴追を受ける可能性のある真実を語る保証などないのです
一方で、民事訴訟においては
訴訟上の和解
という解決方法があります
要は、訴えは出したけど
話し合いで解決して終わらせましょうという対応です
和解で終わらせる場合は
実際の事実関係がどうであったのか
誰に責任があったのか
という点を有耶無耶にすることもできます
(実際、多くの和解では、有耶無耶にして終わらせます)
また、和解金は0円でも構いません
しかも、この訴訟上の和解は
やろうと思えば、裁判が始まってすぐにすることもできます
そして、
訴訟上の和解には
「本件に関する事実関係、和解に至る経緯及び和解内容を秘密とし、合理的理由なく第三者には開示しない」
という守秘義務条項が入れられる可能性が高いです
この和解をする場合
加害者2名にとっては
和解金として支払う金額が0もしくは低額であれば応じるメリットは大きいでしょう
一方のAKS側は、
裁判を提起したことによって真実を明らかにしようという姿勢をアピールできる一方で
真実を語る可能性のある加害者2名に対して
和解の内容も、事件についての真相も
外部に流出させないことを義務付ける
ことができます
まさに一石二鳥どころか、三鳥、四鳥の結果をもたらす可能性もがあります
本件が和解で終了になった場合
上記のような利益がAKSにもたらされる側面もあるので
ファンなどの納得、スポンサーなどの再度の支援が得られるかどうかはわかりません
最後に
今回のAKSの裁判の真の目的はわかりません
確かに、加害者2名が不起訴処分になっていますので
検察審査会への申立がなされない限り
検察庁が加害者2名が事件に至る経緯を含めた事実関係を
法定で明らかにするプロセスには入らない可能性が高いです
また、第三者委員会の調査についても
加害者からのヒヤリングができなかったため、調査結果の持つ説得力が乏しくなってしまった側面があります
これらを踏まえてAKSが
単に訴訟をやったという足跡を残すためではなく
真実を明らかにすることを真に希望して
今回の提訴に踏み切ったのであれば
僕個人としてはこの訴訟を応援したいと思います
そして、事実関係を明らかにするという目的を達成するために
証人尋問などを経て、判決という裁判所による事実認定を受けてもらいたいと思います
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