【ひととき融資】肉体関係をお金を貸す条件にすることは許される?!
「ひととき融資」
という言葉からは、なにか穏やかなものを想像してしまうのですが、実態は
『ヤミ金+売春』
6月5日に、大阪府の公務員が
性的な行為を条件に、法律が定めた上限金利を大幅に上回る金利で女性二人に対してお金を貸し付け
実際に性交渉に至っていたということで
出資法違反で逮捕されました。
報道によると、手口は以下のようなものとのことです。
https://news.livedoor.com/article/detail/16599938/
「インターネットで他人同士が金銭の貸し借りをする「個人間融資」の掲示板で、「お金を貸してください」と投稿している女性を見つけると、メールで希望金額を聞き出し、面接場所を伝えていた。信用情報が悪化して一般の金融機関から借金できなくなった女性に「セックスさせてくれるなら」と条件を出し、金を貸す約束をする。一緒にラブホテルなどに行き、その場で契約が成立すると、部屋で金を渡し、そのままセックスをしていた。藤田容疑者の自宅からは20~40代の女性16人と交わした借用書が見つかり、全員と肉体関係を持っていた。」
「ひととき融資」とは?
肉体関係(性交渉)をもつことを貸し付けの条件とする「ひととき融資」と呼ばれる個人間融資は、
数年前からネット上の掲示板等に出始め、様々な問題に発展しています。
テレビやインターネット等でカードローンのCMを見ない日はないのに、なぜこんな融資を受けるんだろう、と感じられる方もおられるかと思います。
しかし、十分な給料がもらえず、生活費のための借入を繰り返した結果、
借入限度額いっぱいになってしまって追加の借入が出来ない方や、支払いが滞ってブラックリストに載ってしまった結果、
新たなローンの審査が通らないという方が非常に多くいます。
そして、金融機関からの借入が出来ずに困っている方々の足元を見て、違法な条件での貸し付けを行う業者(ヤミ金業者)が未だに暗躍しています。
このいわゆるヤミ金業者が融資を行う場合、法定利息を超えた高利で貸付けるのが典型ですが、
これに加えて、肉体関係(性交渉)を持つこと等の違法な条件を付けてくることも多くなっています。
肉体関係のほかにも、
・年金や生命保険を担保にすること
・携帯電話の契約をして端末を提供すること
・銀行口座を開設して提供すること
・オレオレ詐欺のお金の引き出し(出し子)をさせること
といった、単なる債権回収ではなく、弱みを握って犯罪行為を強要するという事態も起きています。
「ひととき融資」の問題点は?
この「ひととき融資」の問題点は
①業務として融資を行う資格のない者による貸し付けであるという点
②貸付の利息が法律上許される利息の上限を超えているという点
③肉体関係を持つことを強要させるという性被害とそれに付随する性被害
等にあります
1 ①無資格での貸金業
他人への融資を「業として」行う場合、つまり不特定多数の相手に対する貸付を反復継続して行う場合には、
財務局又は都道府県への業者登録が必要です。(貸金業法)
無資格で貸金業を営んだ場合は、10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金という重い刑が科されることになります。
一人だけに「ひととき融資」をしている場合は、「業として」融資を行っているとは認められない可能性がありますが、
同様の手口で複数人に貸付をして、肉体関係(性交渉)を強いていたような場合は、この無資格貸金業者として処罰されます。
今回の被疑者は女性2人にお金を貸し付けていたとのことですので、
「業として」行ったと直ちには断じられませんが、
貸付の状況等によっては無資格貸金業者と判断される可能性もあると思います。
2 ②高金利での貸付
貸金業者であっても、個人間であってもお金の貸付の際に利息を付す合意をする場合には、元本の金額に応じて、利息制限法によって利息の上限が決められています。
元本が10万円未満の貸付の場合 年20%
元本が100万円未満の貸付の場合 年18%
元本が100万円以上の貸付の場合 年15%
そして利息の上限を無視して貸し付けた場合は、出資法違反として、以下の刑罰が科せられることになります。
貸金業者が年20%を超える利息を付した場合
⇒5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金(又は併科)
貸金業者が年109.5%を超える利息を利息を付した場合
⇒10年以下の懲役または3000万円以下の罰金(又は併科)
非貸金業者が年109.5%を超える利息を付した場合
⇒5年以下の懲役または1000万円以下の罰金(又は併科)
本件では出資法が制限する上限金利を超える利息での貸付を行っていたため、
出資法違反での逮捕となったようです。
3 ③性被害
「ひととき融資」の場合、いずれかの性犯罪に直ちに該当するわけではありません。
借主女性が18歳未満でなければ青少年健全育成条例違反(淫行)にはあたりません。
また、貸主とのみの肉体関係(性交渉)であれば、「売春」すなわち不特定の相手方と対価を得て性交をしているともいい難く、売春防止法にも該当しません。
さらに、貸主による脅迫がなされたと認められるような言動が裏付けられなければ強制性交等罪にもあたりません。
敢えて性犯罪で立件するのであれば、準強制性交等罪(刑法178条2項 5年以下の懲役)が考えられると思います。
準強制性交等罪というのは、相手方を抗拒不能(抵抗できない状態)にさせて性交渉をした場合に認めらえる犯罪です。
過去には、
・タレントになりたいと考えていた女性が芸能事務所の採用担当を名乗る男性との性交渉に応じてしまった事件、
・就職活動をしている女性が就職希望先にいる大学OBとの性交渉に応じてしまった事件
などでこの準強制性交等罪(旧準強姦罪)が認められています。
このような「ひととき融資」の肉体関係(性交渉)そのものの問題だけではなく、例えば、
・ホテル代まで支払わされる
・避妊具をつけることを拒否される
・性交渉時の動画や写真を撮影される
・動画や写真をネタにさらに肉体関係や金銭を要求される
といった二次的な被害も受けるケースが多いです。
これらの行為にもそれぞれ犯罪が成立する可能性はありますが、借主女性は、お金を借りているという後ろめたさ、動画などを拡散される恐怖心などから、警察などに相談できないケースも多く、被害として表に出ているのは氷山の一角ではないかと思います。
【個人間融資の注意点】
銀行やサラ金業者からお金を借りられなくなった方々は、
藁にもすがる気持ちで、知り合いやインターネットで融資をしてくれる人を探します。
まさにそのような方の立場の弱さに付け込んで、違法な貸し付けを行うのがヤミ金業者です。
しかも、一度借りてしまうと、
ヤミ金業者側が利息を一方的に上げたり、
因縁をつけて借金額を膨らませるなどして、
ヤミ金業者との関係を終わらせないように、搾り取り続けられるように仕向けてきます。本当に蟻地獄です。
しかし、ヤミ金業者だけではなく、皆さんの身近にも、お金の貸付に応じる条件として様々な違法な要求をしてくる人は多くいる可能性があります。
個人間の貸付だから利息制限法の規制がないと勘違いしている人、
お金を貸し付ける代わりに無償で仕事をさせる人、
そして肉体関係(性交渉)を求める人など、
私が相談を受けたケースだけでも、非常に多くの個人間融資に名を借りた恐喝が行われていることが多いです。
このように、銀行やサラ金業者からもお金が借り入れられなくなったら、
身近な貸主や、ネットで貸してくれる人を探すのではなく、
弁護士に相談に行ってください。
仲の良かった友人であっても、お金の貸し借りをすることで人間関係が悪化してしまうケースは本当に多いです。
正規の貸金業者から借り入れができなくなった時点で、
返済不能に陥っていて、破産をすべきというケースが圧倒的に多いので、
借り換えを繰り返す自転車操業に陥る前に、債務整理や破産申立などをすることで、
心に余裕ができますし、無用なストレスを感じる必要もありません。
貸金業者からお金が借りられなくなったら、その時点で弁護士に相談に行ってください
借金苦で、不要な性被害に遭ったり、犯罪に巻き込まれたりすることが二度と起きないように
abemaTV「有罪率99.9%」の刑事裁判で無罪連発“勝訴請負人”弁護士の信念とは