【保釈後逃走の被告人が宮城県内で確保】逃走した被告人は今後どのような処分を受ける?手助けした女性は?
以前、TBSビビットに出演させていただいた際に解説した
栃木県の宇都宮地裁に起訴された被告人が
初公判前に逃走したという事件
その逃走被告人が
8月4日に宮城県内で身柄が確保されたとのことです
「保釈後逃走の被告、宮城県内で確保 宇都宮地裁に出廷せず女性と逃走」
https://www.sankei.com/affairs/news/190805/afr1908050009-n1.html
身柄確保された前田寿樹被告人は57歳
覚せい剤取締法違反で起訴され、第一審公判中
起訴後すぐに保釈され、制限住居は
交際されているとも報道されている女性の福島県内の自宅
そして保釈保証金150万円は女性が出したともいわれています
その後、制限住居の変更届もせずに
無断で山形県内のアパートに転居し、その後連絡取れなくなったという顛末です
1 保釈の流れを簡単に説明!!
保釈保証金というお金を支払って
勾留という身体拘束から一時的に解かれる保釈
これは起訴後にしか認められません
そして、保釈された被告人は
在宅の被告人と同様に、自宅から公判に出頭することになります
保釈中は身柄がとられていた警察署の外で
普通の生活を送ることができますが
保釈の条件が定められている場合は、それに従わなければなりません
保釈の条件としては
・保釈の際に決められた住む場所(制限住居)を変える場合には裁判所の許可が必要
・海外旅行や3日以上の国内旅行は裁判所の許可必要
・被害者との連絡は弁護士を介さなければならない
・事件関係者との接触禁止
などが定められることがあります
カルロスゴーン氏の保釈条件が厳しいので、報道されていましたね
その後裁判で、判決を受けることになります
実刑判決の場合は保釈の効力切れて収監
執行猶予判決なら勾留の効力が切れるので、そのまま外に居続けられることになります
なお、実刑判決を受けた後、控訴する場合は
もう一度保釈を受けられることがあります(再保釈)
今年6月に神奈川県で実刑判決が確定した小林誠受刑者が逃走した件がありましたが
これは、保釈の効力が切れた後もなお出頭しなかったという事案です
2 逃走した被告人には犯罪は成立する?
結論として、逃走した前田被告人には犯罪は成立しません
刑法には単純逃走罪(1年以下の懲役)などの
逃走の罪が規定されていますが
この犯罪は
身柄拘束を受けている間に逃げた場合だけ成立する
ので、保釈中にはこの犯罪は成立しません
前田被告人は
保釈が取り消されますので、保釈保証金が没収されるという制裁を受けることになります
また逃走する=反省していないという評価を受けるので
検察官の求刑も、裁判官の判決も
重くなることが想定されます
さらに、控訴した場合の
再保釈もまず認められないでしょう
神奈川の小林誠受刑者にも
同様に逃亡罪は成立しません
このことについては以前ブログで詳しく書かせていただきました
一方、アンバランスではあるのですが
女性には犯罪が成立する可能性が高いです
女性が
逃げ場・居場所を提供していれば犯人蔵匿罪
それ以外の方法で逃走を助けていれば犯人隠避罪
いずれも3年以下の懲役または30万円以下の罰金です
なお、もし保釈保証金を知り合いから借りるなどした際に
その使途が保釈保証金であることを告げずに借りたような場合は
借用証などを作成し、返すつもりがあったとしても
詐欺罪(10年以下の懲役)になる可能性もあります
3 最後に
女性が逃亡に巻き込まれたのか
それとも女性が逃亡させたのか
という男性女性のいずれが主導的に動いたのか
という点が、今後焦点になっていくと思います(特に女性の起訴不起訴の判断などに影響します)
今回、前田被告人に保釈を認めたこと
制限住居を女性の自宅にしたこと
については、その判断に疑問が持たれても仕方のない面はあるかもしれません
一方、保釈保証金を出したのが女性なので
保釈保証金が「人質」としての効果を持たないのではないかという問題もありますが
お金に色がついていない以上、本人が出さなければならない(支出しなければならない)という制約は事実上難しいでしょう
さらに、立法論としては保釈中の逃走に対する刑罰はあり得るのかなとも思います
(被告人にGPSをつけるのは、プライバシー侵害が大きいですし、そもそも受刑者ですらない未決の人ですので問題があると思います)
逃亡の動機や役割の解明と
保釈についての今後の立法論等に注目していきたいと思います
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