【新型コロナウィルス 第一便で武漢から帰ってきた日本人2名検査拒否!!】感染可能性のある武漢から入国の2名の検査拒否は当然犯罪になるよね!?

コラム

YouTube動画にもあげてます!

https://www.youtube.com/watch?v=mqD5vyoDpCM&feature=emb_logo

 

日本でも徐々に猛威を振るいつつある新型コロナウィルス

その爆心地ともいわれている中国・武漢に

日本政府は現地にいる日本人の一時避難のためにチャーター便を送り、日本に連れ戻しました。

 

この第一便の搭乗者206人中204人は新型コロナウィルスの検査を受けましたが

そのうち2人は政府側の説得にも応じず、検査を受けずに国内に入ったとのことです

(その後の報道で、この2人も検査を受けたいとはなしているとのことですが、もし罹患していれば時すでに遅し)

 

さすがにこの2人には

「すぐに受けろよ」

と思います。国民皆がそう思っているはず。

 

政治的な主張や何らかの理由などがあるかもしれませんが、

さすがにこの場面では検査を受けないことを正当化はしないのではないでしょうか。

 

【検査を義務付ける法律はないの?】

 

新型コロナウィルスのような感染症について検査や入院を義務付ける法律は

感染症法と検疫法です

なお、新型コロナウィルスは法律に規定のない感染症なので

政府の定める政令によって感染症法上の「指定感染症」、検疫法上の「検疫感染症」に指定されれば

これらの法律の適用を受けることになります

 

<感染症法> ※ 指定感染症に指定された場合、国費での強制入院、就業制限、医師の通報義務等あり

(指定感染症)

第6条 

8 この法律において「指定感染症」とは、既に知られている感染性の疾病(一類感染症、二類感染症、三類感染症及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)であって、第三章から第七章までの規定の全部又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。

(指定感染症に対するこの法律の準用)

第7条 

指定感染症については、一年以内の政令で定める期間に限り、政令で定めるところにより次条、第三章から第七章まで、第十章、第十二章及び第十三章の規定の全部又は一部を準用する。(強制入院の条文などを準用しています)

 

<検疫法> ※ 検疫感染症に指定された場合、問診拒否や虚偽答弁、検査拒否をした場合は刑罰あり

(質問)

第十二条 検疫所長は、船舶等に乗つて来た者及び水先人その他船舶等が来航した後これに乗り込んだ者に対して、必要な質問を行い、又は検疫官をしてこれを行わせることができる。

(診察及び検査)

第十三条 検疫所長は、検疫感染症につき、前条に規定する者に対する診察及び船舶等に対する病原体の有無に関する検査を行い、又は検疫官をしてこれを行わせることができる。

 

第三十六条 次の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。三 第十二条の規定による質問に対し、答弁をせず、又は虚偽の答弁をした者

四 第十三条の規定により検疫所長又は検疫官が行う診察(第三十四条の二第三項の規定により実施される場合を含む。)又は検査(同項の規定により実施される場合を含む。)を拒み、妨げ、又は忌避した者

 

政府は、政令によって感染症法上の「指定感染症」、検疫法上の「検疫感染症」に指定しました

 

しかし、施行2月7日はからですので

2月7日以前に日本に入国した人などに対しては、入院や検査を刑罰などをもって強制することはできません

原則的には入院するも、検査するも各人の自由ですので

政府は入国者に対して検査をするよう粘り強く説得するしかない、検査をチャーター便利用の条件とするなどの対応しかできないということになります

 

直ちに政令が施行されずに、2月7日とされるのは

政令には公布

要は国民に知らしめる手続が必要になります。官報に載せるなどがこれにあたります。

国民に義務を課したり、自由制限するものなので、一定の手続は必要ということになります。

 

【検査拒否した2名は当然犯罪になるよね?】

 

この人たちは犯罪になるよね

新型コロナウィルスに罹患してうつしたら犯罪になるよね

と何人かに聞かれたのでリーガルチェックしていきたいと思います。

 

傷害罪は?

刑法第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 

 

 

新型コロナウィルスに感染するのは傷害(身体の生理的機能障害)になりますので、傷害罪が検討対象にまずなります。

 

しかし結論として傷害罪は厳しいのではないかと思います。

 

⑴ 何をもって傷害という犯罪をしたというのかが難しい(実行行為の問題)

傷害結果が生じても、殴れば傷害罪、間違ってぶつかったりする場合は過失傷害罪、車でぶつかった場合は自動車運転過失傷害罪

傷害を負わせる原因となった犯罪行為(実行行為)は何なのかによって成立する犯罪は異なります。

 

そこで、今回の検査拒否2名の何が、人を殴るのと同視できるような犯罪行為(傷害罪の実行行為)なのか

傷害結果が発生する現実的な危険性のある行為は何?という点を検討しなければなりません。

 

まず、検査拒否自体はこの実行行為には当たらないと思います

検査拒否そのものは傷害結果が発生する現実的な危険性を持っていませんので

 

では、外を歩く、スーパーに行った、コンビニに行った、映画館に行った、さらに病院に行ったというのは?

これらはウィルスを巻き散らかしている側面はあるので、

解釈によっては、傷害罪の実行行為になるのかもしれませんが、

それ自体が直ちに新型コロナウィルスに他人を感染させる現実的危険性がある行為かといわれると・・・

またこれを傷害罪の実行行為とみてしまうと、風邪をひいたり、インフルエンザに罹患している人が同じことをしても傷害罪の実行行為を行っていると評価されることになってしまいます

難しい問題だと思いますが、この実行行為性が認められるのかどうかが大きなハードルになると思います。

 

⑵ 因果関係が厳しい

では仮に人込みの中に行くことが傷害罪の実行行為にあたるとしても

傷害罪が成立するためには、この実行行為によって第三者への感染を生じさせたことが間違いないといえる必要があります

要は、検査拒否2人が感染源であることが間違いないといえるか、という問題です

 

先日、銀座のデパートに行く機会があったのですが、中国人と思しき人だらけでした

渋谷も同じような状態でしょうし、大きなドラッグストアに行けば観光客らしき人たちが多くいます

 

さらに、2次感染の可能性等も考えると

第三者がどこで新型コロナウィルスに罹患したかのわからないはず

つまり、検査拒否2人によって新型コロナウィルスに感染したことが間違いないとはさすがにいえないのではないかということになります

 

⑶ 結論

これらからすると傷害罪は難しいのではないかと思います

 

 

では過失致傷罪は?

刑法第二百九条 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。

      2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

 

過失致傷罪にいう過失行為は

過失=予見可能性+回避可能性

つまり

傷害結果が起きる可能性を予見できて

なおかつそれを回避することもできた

にもかかわらず敢えてやったということ

によって裏付けられます

 

爆心地の中国・武漢にいた

のどの痛みや熱などの症状で感染可能性があるとわかっていた

感染している可能性がある自分が社会内で生活をすれば蔓延させる可能性があることは理解していた

となれば予見可能性は当然あるということになるでしょう

 

さらに空港で検査受けていれば罹患はわかった

そして隔離・治療していれば第三者への感染は回避できた

したがって回避可能性もあった

 

ということになりますので

罹患して感染させる可能性あることを認識していたのに敢えて検査受けずに外にいた

ということで過失があったという評価はできるかなと思います

 

しかし、傷害罪と一緒で

因果関係の証明が難しい

ということになるのではないかと思いますので

過失傷害罪も厳しい

と思います

 

民事での損害賠償は?

 

民事上、検査拒否2名に故意過失があって傷害結果が生じ、治療費等の損害が生じた場合は

不法行為などによる損害賠償請求が可能です

 

しかし、これも検査拒否2名による感染なのかという点の証明が必要なので

やはり難しいのではと・・・

 

結論として

政令施行前に入国したこの検査拒否2人に対して、

民事上刑事上の責任を問うのは難しいのではないかと思います

 

同義的な責任はあるので、社会は許さないような気がしますが・・・

 

 

【検査拒否2名の特定・拡散による大リスク】

 

今回の件は、恐らくこの2名が誰なのか特定するツイートなどが出るのが時間の問題だと思います

ネット上の特定班の人たちの特定力はハンパないので

 

そして今回の特定については

名誉棄損罪にはならない可能性はそれなりにあるかなと思います

 

新型コロナウィルスに罹患している人が生活圏にいる=事実の公共性あり

それを知らしめて感染予防をしてもらう=目的の公益性

事実が真実なら、公共の利害に関する特例によって、民事刑事ともに名誉棄損としての責任を負わない

ということになるのではないかと思います

 

もっとも間違っていた場合は本当にヤバイ

そのデマが広がったら、デマの被害者の人は社会生活を送れなくなります

その人だけでなく、家族、その人のいる会社や学校などももろとも敬遠されることになります

名誉毀損罪、偽計業務妨害罪などでそれなりに重い刑罰を受けることになるでしょう

 

 

恐らく国も、今回の件に関するデマについては

相当厳しい姿勢で臨むと思いますので

逮捕者も出るのではないかと思います

 

また損害は莫大になりますので民事上の損害賠償額も多額に

 

デマ情報を流した人は相当な覚悟が必要です

 

さらに、リツイートをした人、まとめサイトなどで拡散した人も共犯者です

 

先日もブログアップしましたが

東名あおり運転やガラケー女のデマ拡散以上のリスクがあると思います

 

迂闊な拡散には本当に気をつけてください!

 

アトム市川船橋法律事務所

https://www.ichifuna-law.com/

 

 

 

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