「勝手に駐車したら違反料金2万円」払わないといけないのか?弁護士が解説
巷ではよく駐車場に「勝手に駐車したら損害賠償金として2万円お支払いいただきます」などの看板がかかっていることがあります。
そういったケースで駐車場に勝手に駐車したら、本当に2万円を払わないといけないのでしょうか?
設定されている金額にもよりますが、法的には支払いをしなくて良いケースが多数と考えられます。
この記事では他人の駐車場に勝手に駐車した場合に看板に書かれた金額を払わねばならないのか、弁護士が検証します。
1.通行料4万円の通路を通って事件が起こる(茨城県神栖市)
「駐車場に違法駐車したら2万円」などを書かれた看板が有効かどうかを検討するのに参考となる事件があります。
事件の現場は茨城県神栖市です。そこの「波崎シーサイド道路」の一部を私有地として所有している男性は、常日頃から通行車に対して私有地内の通行を禁止していました。
「通行禁止 勝手に通った場合には4万円をもらいうける」といった内容の看板を立てかけていたのです。
通行者が払わない場合、男性はその車のガラスを割ったりするトラブルも起こしたことがありました。今回の事件では通行料を払わなかった人に対し、男性が軽トラックを急発進して重傷を負わせました。男性は傷害罪で逮捕されています。
2.「勝手に通ったら4万円」は有効か?
本件で土地所有者の男性はシーサイド道路内の私有地について「勝手に通ったら4万円」と看板を出しています。
この状況は、駐車場などで「勝手に駐車したら2万円」などの看板を出しているのと同じといえます。
このような看板による金銭の請求は有効なのでしょうか?通行した人や駐車した人が本当に2万円や4万円を払わねばならないのか、検討しましょう。
3.原則として私有地を勝手に通ってはならない
本件男性の所有地や一般の駐車場などは「私有地」です。私有地については、他人が許可なく勝手に通行してはなりませんし、勝手に駐車するのも違法です。
ただし刑法上の犯罪にはなりません。所有者から損害賠償請求される可能性があるのみとなっています。
4.2万円、4万円の損害賠償金は認められない
「駐車場に勝手に駐車したら2万円」「私有地を勝手に通ったら4万円」などと定めるのは、土地の所有者が違反者へ損害賠償請求をする意味ととらえられます。
ただし損害賠償金を請求するには、請求者が損害金を証明しなければなりません。「金額を言っているだけ」ではその金額での請求ができないのです。
常識的に、道路を通行しただけで所有者に4万円もの損害は発生しないでしょう。
同様に、駐車場に一時的に駐車しただけで2万円もの損害は発生しないと考えられます。
すると、私有地を勝手に通行・駐車しても4万円や2万円などの高額な損害賠償金は請求できないといえるでしょう。
結論的に、巷によくある「勝手に駐車したら2万円」などと書いてある駐車場に勝手に駐車しても、2万円の金額を実際に払う必要がないケースがほとんどと考えられます(ただし請求されればいくらかの少額な損害賠償金を払う必要はあるかと思われます)。
5.損害賠償の予定にもならない
当事者同士が事前に損害賠償金についての合意をしていたら、請求者が損害金を立証しなくても請求ができます。
ただ本件や駐車場に勝手に駐車した事案では事前に損害賠償額について合意していません。
よって、損害賠償額の予定としても2万円や4万円の請求はできないと考えるべきです。
6.通行料を請求する場合には請求できることも~契約が成立する場合~
一方、契約によって通行料や駐車料金を請求する場合には、2万円や4万円の請求が有効となる可能性があります。
私有地を通行するための通行料や駐車料金は、権利者が自由に決められるので、通行料4万円、駐車料金2万円とするのも自由です。
通行者や駐車車両が設定された料金に納得して通行・駐車したら、契約が成立してしまうので、土地利用者は定められた通行料や駐車料金を払わねばなりません。
契約が成立している以上、料金がいくらであっても有効になります。たとえば1個100円の価値のりんごを1万円で売り、1万円で買う人がいたらそこで契約が成立するのと同じです。
なお本件では通行料ではなく「損害賠償金」として請求しているので、やはり4万円の請求は難しいでしょう。一般的な2万円の駐車料金についても同様です。
7.法律上、禁止される自力救済
本件で土地所有者は、通行者が損害賠償金を払わないので相手を傷つけてしまいました。
このように、権利を実現するために法律を無視して自力で救済しようとすることを「自力救済」といいます。
自力救済は違法ですし、刑法などの法律に触れると刑罰を科される可能性もあります。
本件の土地所有者も傷害罪で逮捕されています。
自分の権利が害されているなら、法律上の正しい手続きで実現しましょう。
まとめ
一般的に、「駐車場に勝手に駐車すると2万円」などの看板があってもその金額を支払う必要はないケースが大半です。ただし違法になってしまう可能性が高く、トラブルも生じやすいので他人の私有地には勝手に入らないように注意しましょう。
こちらの動画でも本件について弁護士が解説しているので、ぜひご覧ください。