弁護士が教える反対尋問のポイント

お知らせ

 

 

弁護士というと、「尋問を行う仕事」というイメージを持つ方が多いでしょう。

中でも反対尋問は、敵対証人に対して尋問する手続きであり、尋問のハイライトのように思われているケースが多々あります。

 

今回は敵対する相手方から聞き取りをする際に使える「反対尋問のスキル」について、現役の弁護士が解説します。

尋問に対し関心をお持ちの方は是非参考にしてみてください。

 

You Tube動画へのリンク

 

1.反対尋問の目的

反対尋問は何のために行うのでしょうか?

実は世間では誤解されているケースが多いので、正しい目的を確認しましょう。

 

反対尋問の目的は、「こちらのストーリーが正しいことを確認すること」です。

相手方の言うことの糾弾や否定ではありません。

よく映画やドラマなどでは、反対尋問で相手を非難したり否定して追い詰めたりするものがみられますが、ああいったものは実際の尋問とは異なります。

あくまで裁判官に対し「こちらのストーリーが正しいことを確認する」のが目的なので、間違えないように覚えておきましょう。

 

2.活かす尋問と殺す尋問

反対尋問には「活かす尋問」と「殺す尋問」の2種類があるといわれます。

2-1.活かす尋問とは

活かす尋問とは、相手の言っている内容をなるべく活かしてこちらが有利な内容になる内容を明らかにするための尋問です。

たとえ敵対証人であっても、こちらに有利な内容を話すことが少なくありません。そういった場合には相手の言っている中でこちらに有利な部分を際立たせ、裁判官にアピールするのです。

活かす尋問の例

たとえば不倫が問題になっているケースで証人が「ラブホテルに行ったけれど話をしただけで、何もしていない」と肉体関係を否定しているとしましょう。

この場合でも、相手方は「ラブホテルに行った事実」自体は認めています。

その前提として出会い系サイトで会ったことや何度も食事に行ったことなどを認めていたり、ホテルに6時間いたことなどを認めていたりしたら、不倫の蓋然性が大きく高まるでしょう。

このように、こちらの言いたいことを認めさせるのが「活かす反対尋問」のスキルです。

 

2-2,殺す尋問

「殺す尋問」は、証人を信用できなくするための尋問です。たとえば今までに出ている証拠と矛盾する、常識に外れている、過去供述と矛盾していることを指摘して、証人の言っていることの信用性を崩します。

 

3.証人を殺すのか証言を殺すのか

反対尋問では、「証人を殺す」尋問なのか、「証言を殺す」尋問なのかという視点もあります。

証人を殺す尋問とは、証人自身の信用性を失わせる尋問です。たとえば以下のような事情があると、証人の信用性は失われやすいでしょう。

  • 記憶喪失
  • 過去の虚言
  • 利害関係

 

証言を殺す質問とは、証言の信用性を失わせる尋問です。たとえば以下のような事情があると、証言は信用されにくいでしょう。

  • 見間違い
  • 聞き間違い
  • 思い込み
  • 自己矛盾

 

これらの違いを意識しながら尋問を行っていくと、効果的な反対尋問をしやすくなります。

 

4.反対尋問のスキル

反対尋問で要求されるのがどういったスキルなのか、お伝えします。

4-1.主役は尋問者

主尋問と異なり、反対尋問の主役は尋問者です(主尋問の場合、主役は証人自身)。

反対尋問の場合、証人に自由にしゃべらせてはいけません。自由に話させると相手に有利な内容ばかり話されてしまうためです。

 

4-2.はいかいいえで答えさせる

誘導尋問を使ってこちらの質問に対し「はい」と認めさせましょう。

一問一答で質問を区切りながら、否定できない質問をしていって「はい」を繰り返させます。たとえば契約の成立が争われている事件で以下のように進めると、相手に「契約内容を理解して署名押印した」と認めさせやすくなります。

 

「あなたは契約書にサインしましたね」→はい

「契約書の内容を見ましたね」→はい

ここまで確認した上で「契約書中には費目や金額等が書かれていましたね」と聞くと、相手は「はい」としか答えられなくなります。「やっぱり契約内容は見ていません、理解していませんでした」という弁解をできなくなるのです。

 

 

4-3.オープンな質問や議論は避ける

答えの分からないオープンな質問や「なぜ?」と理由を尋ねる質問はしません。相手の好きに答えさせると相手の有利になってしまうからです。

「議論はしない」という視点も重要です。尋問はあくまで事実確認するための手続きなので、議論を繰り広げても意味がありません。

 

また相手がはぐらかしたり論点ずらしをしたりした場合、何度か同じ質問を繰り返して問に答えさせるスキルも有効です。

 

5.最後に

今回は反対尋問に関する知識やスキルを解説しました。

ただしこれを日常で多用すべきではありません。日常で使って相手を追い詰め過ぎると、人間関係が悪化する可能性が高くなるからです。

たとえば夫婦や家族、恋人同士や友人などの場合、問い詰めるとしてもあまり追い詰めすぎない方が良いケースもよくあります。人間関係を壊したくなければ、相手に逃げ道を与えるも重要なので、理解した上でスキルを活用しましょう。

 

You Tubeでも、わかりやすく解説していますので、よければぜひご覧ください。

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