回転寿司テロのリスクを弁護士が解説!
回転寿司での迷惑行為が世間の関心を集めています。
迷惑な客が寿司を触ったりなめたりポテトを勝手に食べたりして、自ら目立つためにツイッターやインスタグラムで投稿をしているケースが多数起こっているのです。
こういった行為は「回転寿司テロ」などとよばれていますが、回転寿司テロは違法行為です。絶対にやってはなりません。
今回は回転寿司テロをしてしまった場合のリスクについて弁護士が解説しますので、今後の参考にしてみてください。
動画でも回転寿司テロのリスクに付いて解説しています。
1.事案の概要
多くの回転寿司チェーンで客が遊び半分で迷惑行為の動画をあげているのが話題になりました。どのような迷惑行為があったのか、みてみましょう。
- 寿司を触る
- ポテトを食べる
- しょうゆの口を舐める
- つばを寿司に付ける
- わさびを寿司につける
- お茶の粉を直接たべる
- レーンで遊ぶ
- 食べかけの食品をレーンに戻す
回転寿司テロを起こしたのは、子どもから高齢者までさまざまな年代の人であり男女ともに存在します。
中でも「スシローでしょうゆ差しをなめた高校生」の件が特に世間をにぎわしています。スシローに莫大な損害が発生して株価が170億円も低下しましたし、スシローが加害者側の謝罪を受け入れず断固たる姿勢をとることを明らかにしたためです。
以下では回転寿司で迷惑行為をするとどういったリスクが発生するのか、みてみましょう。
2.犯罪が成立する
まずは刑事的な犯罪が成立します。
2-1.窃盗罪
回転寿司店でポテトなどの食品を勝手に食べたら窃盗罪が成立します。食べた後に罪を逃れるため店員などに暴行を振るうと、事後強盗罪が成立する可能性もあります。
2-2.器物損壊罪
しょうゆ差しや湯呑みの口を舐めたりつばをつけた指で寿司を触ったりすると、もともとの目的を果たせなくなってしまい物の価値が失われます。よって器物損壊罪が成立します。
2-3.偽計業務妨害罪
嫌がらせによって回転寿司チェーンの営業を妨害すると、偽計業務妨害罪が成立します。
2-4.建造物侵入罪
迷惑行為をするために寿司屋に入ると、違法な目的のもとに建造物に侵入したことになるので建造物侵入罪が成立します。
3.民事的な損害賠償
犯罪よりも大きな問題になると考えられるのが、民事的な損害賠償の問題です。
特に今注目されているのは、スシローでしょうゆ差しをなめた高校生に対するスシローからの損害賠償案件です。優に1000万円以上の損害が発生していると考えられ、高校生には払えない金額となると予測されています。
スシロー側は具体的にどのくらいの損害賠償ができるのか、以下でみていきましょう。
- 人件費、株主総会、メディア対応費用
まずは各種対応のための人件費や株主総会、メディア対応などのため、スシロー側に100万~数百万円単位の費用が発生するでしょう。
- しょうゆ差しの交換費用、湯呑みのクリーニング代
スシローが全店舗におけるすべてのしょうゆ差しを交換した場合、1932万円程度の損害が発生する可能性があります。
- 臨時休業や閉店の損失補填費用
店舗が臨時休業したり閉店したりすると、5000万円以上の損害が発生する可能性があります。
以上のように考えられるだけでも極めて高額な損害が発生する可能性があるといえるでしょう。
会社の時価総額が下がったら損害賠償請求可能?
今回の回転寿司テロによってスシローの株価が暴落し、170億円の時価総額低下が起こっています。スシローは高校生へ170億円の賠償金請求ができるのでしょうか?
こちらについては困難と考えられます。なぜなら時価総額170億円分はスシローの損害ではないためです。
時価総額の低下によって影響を受けるのは株主であって会社ではありません。
では株主は高校生へ損害賠償請求できるのでしょうか?
こちらについても難しい面があります。そもそも株価は日常的にアップダウンするものであり、今後戻してくる可能性もあります。一時的に下がったというだけでは損害賠償請求は難しくなるでしょう。
また他の要因によってスシローの株価が下がる可能性もあり、すべての損失を高校生の責任にすることはできません。
4.デジタルタトゥーのリスク
3つ目の問題として、回転寿司テロを起こすとデジタルタトゥーのリスクも発生します。
デジタルタトゥーとは、ネット上に悪い評判や過去の悪事に関する事実が延々と残り続けてしまうことです。たとえば過去の前科情報がデジタルタトゥーとして残り続ける場合などがあります。
デジタルタトゥーが残ると、人生の各場面に置いて不利益を受ける可能性が高まります。
- 就職活動をしても不採用となる
- 結婚相手に調べられて結婚が破談になる
- 退学処分を受ける
- 子どもがいじめを受ける
- 親や子ども、兄弟姉妹などの家族が不利益を受ける
このような状態が今後何十年も続く可能性があるので、デジタルタトゥーは非常におそろしいものといえます。
5.回転寿司テロで考えられる問題点
回転寿司テロに関し、今後以下のような問題がでてくる可能性があります。
5-1.テロの手段化
今後、回転寿司店への報復などのためにテロを手段化するケースが発生する可能性が懸念されます。たとえばライバルつぶしなどの目的でわざとテロ行為をして相手の評判を落とすなどです。こういった「テロの手段化」をすると世間に混乱をもたらしますし違法行為ですので、絶対にやってはいけません。
5-2.濫訴
「スシローにいけなくなったから加害者(高校生)へ訴訟を起こす」などと言っている人もいますが、そのようなことをしても裁判では認められない可能性が高いでしょう。敗訴してしまいますし、場合によっては高校生側から反訴されたり名誉毀損として訴えられたりする可能性もあります。回転寿司テロの犯人が憎いとしても、濫訴をすべきではありません。
今回は世間を騒がせている回転寿司テロについて解説しました。
動画でも解説していますので、よければぜひご覧ください。