「スタバのアイスドリンクは氷が多い?」~弁護士が見るスタバのアイスドリンク量少ない裁判~
昨日、面白いニュースがYahoo!トップに出ました。
「スタバのアイスドリンク量少ない」5.3億円超の賠償要求 米
[box] 【AFP=時事】米シカゴ(Chicago)在住の女性が、米コーヒーチェーン大手のスターバックス(Starbucks)を相手取り、アイスコーヒーやアイスティーなどの飲み物の量が広告の記載より少なく、過剰な料金を客に支払わせているとして500万ドル(約5億3000万円)以上の損害賠償を求める訴えを起こした。(以上引用)[/box]
訴えた女性は、要は
・アイスドリンクの表示量の3分の1以上が氷じゃないか!
・アイスドリンクの方がホットドリンクより高いのにコーヒーの量は少ないじゃないか!
ということで虚偽表示、消費者に対する詐欺だとの主張のようです。
(法律家としては、消費者全体の利益代表として訴訟提起していることに驚いています・・・)
このニュースを見て二つのことを考えました
1 こういうことはよくあるなぁ問題
「居酒屋で生ビールを頼んだら、半分くらい泡」
「ステーキを頼んだら、3分の1くらいが脂身」
このような経験をされたことがある方はたくさんいるのではないでしょうか。
お店側として、よかれと思ってやっている場合や、
材料費の高騰などのため、やむを得ずサイズダウンした場合など
お店側に色々な事情はあれど、お客さんが不満に思うことは多いと思います。
このような場合、店に「交換してください」と言えば
多くの場合、別なものに交換してくれるでしょう
でも、お店が交換を拒否することもあり得ます
このような場合に、客は交換を強制できるでしょうか?
細かい説明をすると夕方になってしまうので、概説に止めます
飲食店で私たちは、飲み物や食べ物をお金を払って買っているわけではありません。
お金を払って、「そのお店の提供するサービス」の供給を受けているものと解されます。
(この点は、食べ残した物を持ち帰る権利があるか、という話題でよく議論されます)
ですので、お店のサービスであることが明示されているか、理解できるような場合
『生ビールの泡を楽しんでもらうのが当店のサービス』
『肉の脂身を味わってもらうのが当店のサービス』
『キーンと冷えたアイスコーヒーを提供するのが当店のサービス』
といわれてしまえば、
提供された物がよほど劣悪なものでない限りは、交換は請求できないと思われます。
ただ、スターバックスの場合は、テイクアウト客が多いため
レストランなどの飲食店と同列にしていいか、という点は難しいところですね。
2 訴訟社会化問題
ニュースの論調などからは
『さすが訴訟社会アメリカ!』
『この女性は訴訟ビジネスでは?』
というニュアンスが感じられます(私見です)
確かにアメリカは訴訟社会といえるかもしれません。
『マクドナルドのコーヒーが熱すぎるから火傷をした!』と訴えた事案
(これはマクドナルドが賠償に応じました)
『バドワイザーを飲んでも女性にモテない!CMは虚偽だ!』
『ユニバーサルスタジオのアトラクションが怖すぎるから賠償請求!』
という事案もありました。(これらは棄却)
さらには
『震えている猫を電子レンジで温めたら死んでしまった!説明書には「動物を入れてはいけません」とは書いてない!』
として訴えた人がいるという都市伝説すら出ている始末です。
さすが訴訟社会アメリカ
と思われる方もいるかもしれませんが
このような裁判は対岸の火事ではないかもしれません。
日本でも、経済団体の強い要望から、弁護士の人数が急激に増加しています。
現在の登録弁護士数は、僕が登録した当時の2倍です。
その結果、弁護士業界の顧客獲得の争いは熾烈になってきています。
収益のため、今までであれば訴訟化しなかったような事案でも、弁護士が着手金をもらうために『事件』として掘り起こす事態も、今後は増えていくかもしれません。
寄席でいびきをかいて居眠りをしていた客が退出させられたところ
その客が「落語を聞く権利を侵害された」と賠償請求をしたり
野球場に楽器を持ち込むことを禁止された応援団が
「楽器の持ち込みを禁止するのは球場の裁量違反」として規定の無効を訴えたり・・・
僕の見たケースでも
自動車事故の被害者が『代車が気にくわない』と言って保険会社に慰謝料請求をしているという事案もありました。
不満や不利益取扱いに対して、強く権利主張することは
非常に大切です。
しかしその一方で
権利行使に名を借りて、弁護士が訴訟社会化の風潮を煽ったり
売名・訴訟ビジネス目的で裁判手続を利用するのはよくないなぁ
とか、スタバのフラペチーノ飲みながら考えているGWです