【日大アメフト部反則問題】被害届と加害選手の記者会見
事件が今日明日で大きく動きそうです
日大アメフト部の選手が
故意に関西学院大学のクオーターバックの選手に後ろからタックルをした件で
被害者の親御さんが警察(警視庁)に被害届を出し、記者会見を行いました
また明日は加害選手自身の記者会見もあるとのことです
被害者の親御さんが被害届を出すという選択には、僕は非常に疑問を感じています
以前にもブログなどに書かせていただいたのですが
被害届=こんな被害に遭いましたという申告
告訴=こんな被害に遭いましたという申告+加害者の処罰を求める意思表示
ですので、告訴の方が被害者のお気持ちを捜査機関に届けるよい手段だと思います
そして、被害届と告訴には手続的な違いはほとんどありません
なにより、捜査機関の動きが違います
被害届よりも告訴状を受理させた場合の方が、
処罰の意思が明確であるがゆえに、捜査をしっかりと行わなければならないというプレッシャーを与えられますし
告訴をした被害者に対する説明責任なども大きくなります
一方で、捜査機関にとっては告訴状を受理すると事務処理量が数倍に増えるという結果をもたらしますので
「告訴状ではなく被害届でいいじゃないですか」
「(受理せずに)一応、告訴状のコピーだけもらっておきます」
「告訴は取り下げると二度と告訴できなくなりますよ」
「ちゃんと捜査をしてから告訴状を受理します」
という全く理由になっていない屁理屈で告訴状の受理を拒絶してきます
僕は仕事上何度も告訴状を提出したことがありますが
告訴状を出しに行って「はいわかりました」と受理してもらった件はほとんどありません
長いときで3時間ほど粘られました
弁護士が告訴状を持って行ってもこんな事態になるわけですから
一般の方が告訴状を持っていったら、まず言いくるめられて持ち帰ってくる結果になることは
想像に難くないと思います
今回、被害者の親御さんが加害者側の処罰と、真相解明を求めるのであれば
被害届を出すのではなく、告訴状の提出をすべきことは明らかです
もしかしたら、法律的なアドバイスを受けられていないかもしれませんので
もし加害者側の処罰と真相解明を求めるのであれば
今からでも遅くないので、告訴状を提出すべきです
次に今後の捜査についてですが
今回の件で加害選手には
傷害罪が成立するものと思われます(加害選手が成人の場合)
傷害罪の法定刑は15年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金です
示談が成立するかどうかにもよりますが、仮に裁判になるとしても
30~40万円程度の罰金になるのではないでしょうか
一方、監督には場合によっては傷害罪の共謀共同正犯が成立し得ます
共謀共同正犯というのは、複数人が共謀をして、そのうちの一部の人が実行した場合に
他の人も共同正犯つまり実行者と同じ責任を負う場合のことです
今回の場合、一部の報道にあるように
関西学院のクオーターバックに怪我を負わせるよう監督が指示していた場合
怪我を負わせたら次の試合の出場を監督が約束していたような場合
には監督にも傷害罪の共謀共同正犯が成立する可能性が高いと思われます
監督の指示を「忖度」してやったような場合や
選手を鼓舞する意味で「潰してこい!」「削ってこい!」のような発言をしていたような場合は
共謀共同正犯に問うのは難しい可能性もありますが
過去の試合での行き過ぎたラフプレーの有無
そのラフプレーを行った選手の特別扱い
ラフプレーを称賛するような言動
などがあるような場合は、立証は簡単ではありませんが傷害罪の共謀共同正犯として立件される可能性もあり得ると思います
監督側は争うでしょうが・・・
そして、監督が有罪との判断を受けるのか
つまり監督に傷害罪の共謀共同正犯が成立するのか否かは
最も重要な証拠である加害選手の供述
つまり実行犯の加害選手がどのようなことを話すのかに寄ってくると思います
検察官が共謀共同正犯で起訴するのであれば
その立証構造の中心は間違いなく加害選手の供述だと思います
その意味で、明日の記者会見で加害選手が何を話すのか
非常に注目です
スポーツ中のラフプレーはよくあるものですし
ラフプレーが直ちに警察沙汰になるわけではありません
サッカーなどでも、わざと足にタックルを受けたという話を聞くことがありますが
ラフプレーとして片付けられる可能性がありますし
「そんな気はなかった」と加害者に言われてしまうと
故意行為による傷害だとして立件することはかなり難しいでしょう
しかしながら今回は、加害行為がビデオを見て十分確認できるという珍しい案件です
ビデオという客観的な証拠があり
しかもタックルが明らかに反則行為
つまりラフプレーの範疇から逸脱していることが客観証拠から明らかな事件であるため
かなり珍しい案件ではないかと思います
加害選手が何を話すのか
監督が刑事責任を問われるのか
監督の刑事責任以外の民事責任(損害賠償)や日大の中での地位がどうなっていくのか
注目していきたいと思います
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