【留置場から逃走】大阪・富田林署の接見室から被疑者が逃走

コラム

普通に考えるとあり得ない逃走劇だと思います。

 

弁護士接見のために接見室に来ていた被疑者が

被疑者側と弁護士側との間を仕切るアクリル板を

外して?もしくは隙間をこじ開けて?

逃走したとのことです

 

なぜあり得ないと感じたのか

その前提として

被疑者との接見を行う接見室の状況と

弁護士との接見の流れを

簡単にご説明させていただきます。

 

【接見室】

テレビなどでも見たことがある方が多いと思いますが

透明なアクリル板の仕切りがある部屋で

被疑者と接見者(一般の方、弁護士)が面会をする仕様になっています

一部屋には大体3〜4枚の大きなアクリル板が設置されています

そして、座って話をする高さに

穴が複数空いていて、そこから声が聞こえるようになっています

アクリルという物質の性質は詳しくはありませんが

少なくとも思いっきり殴ったり蹴ったりしても

バットで叩いても壊れないと思います

ヒビすら入らないと思います

 

ただ、アクリル板と枠の間のゴムパッキンみたいなところが

劣化していて、年季が入っているなぁと感じたことは何度もあります

今回は、アクリル板を壊したわけではなく

隙間を押し広げたか何かの方法で脱走したようなので

このゴムパッキンのようなところが劣化している状態を利用したのではないかと思います

 

【接見申し込みから接見終了まで】

今回の事件は、弁護士接見後もしくは接見中に脱走したという報道のようです

 

そこで、弁護士の接見の際の流れをご説明させていただきます

まず、弁護士は警察署の留置管理課の受付で

接見の申し込みをします

(申込書に自分の名前と被疑者の名前を書きます)

そして、自分の前に別な接見者がいなければ

すぐに接見を開始します

警察署の接見室は一部屋しかないことが多いです

 

一般の方は午前9時から午後4時までの間しか接見ができませんが(接見禁止のないケース、昼休みあり)

弁護士は24時間いつでも接見ができます

 

また一般の方の接見は

15分程度しか認められず

しかも被疑者側に立会の警察官が1人入ります

 

しかし弁護士は警察官の立会なく何時間でも接見できます

 

接見の申し込みが17時以降から朝8時までの間は

警察官は当直体制になるので

留置管理課も手薄になります

 

接見開始時は部屋までナビゲートしてくれますが

終了時には

被疑者に接見室被疑者側のドアを叩いてもらってもなかなか出てこない時がありますし

弁護士が接見が終わった旨伝えようと

留置管理課の窓口に声をかけたり

留置場のドアをノックしても、なんのリアクションもない時があります

なお、弁護士には接見が終わったことを警察に伝える義務はありません

通常は接見が終わった際、被疑者が接見室に置いてけぼりにならないように

被疑者を警察官が迎えに来るまで弁護士が待っているか

弁護士自ら警察官に直接接見が終わった旨伝えて、接見室に迎えに行ってもらうようにします

しかしこれは被疑者のためにやっていることなので

「自分で警察官を呼ぶので大丈夫です。お疲れ様でした!」

とか言われるとそのまま帰ることもあり得ます

 

接見室を出てから、警察署を出るまで

誰にも会わないような警察署だと

今回の事件のように、弁護士が接見を終えて出たことを警察官が把握せず

被疑者が接見室内に残ることも

ありうるだろうなとは思います

 

富田林署では、弁護士が接見室を出る際に

ランプが点くかブザーが鳴る仕様だったようですが

その電池を外していたとのことです

 

そのような仕様の警察署も結構あると思います

ただ、ブザーが鳴っても警察官が出てこなかったり

ランプが点滅している部屋に誰もいなくて

意味ないなぁと思ったこともありますが

 

【弁護士の関与】

今回の件で、被疑者はアクリル板をもしくはその枠などを損壊している可能性があるので

加重逃走罪(刑法98条)が成立する可能性があります

そして、どのタイミングで被疑者が逃走したのかわかりませんが

もし弁護士の目の前でアクリル板をこじ開けていたら

もしくは弁護士がそれを唆したのであれば

(リスクが大きいので通常考えられませんが)

逃走援助罪(刑法100条)が成立する可能性があります

(加重逃走)
第九十八条 前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して、逃走したときは、三月以上五年以下の懲役に処する。
(逃走援助)
第百条 法令により拘禁された者を逃走させる目的で、器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為をした者は、三年以下の懲役に処する。
逃走の罪は
逮捕された被疑者に「逃げるな」と命ずる刑罰なのですが
刑罰対象者である被疑者らに
この法律を守らせる期待可能性は低いと考えられています(やるなっていうのは酷だよね、ということです)
それだけに単純逃走罪は懲役一年以下という軽い犯罪になっています
しかし、物を壊したり、暴行脅迫をしてまで逃げることや
周りの人間が逃走を援助する
というのは、少し話が違います
そこまでして逃げることに
刑法は寛容ではありません
ですので、単純逃走罪に比べて
加重逃走罪や逃走援助罪は重い刑罰が定められているのです
【まとめ】
このように接見室の仕様などからして
アクリル板を壊したり、アクリル板を外して逃げるというのは
相当、いやめっちゃくちゃハードルが高いと思います
アクリル板を完全に外すことはもとより
一部外して体をすり抜けさせる行為も
もはやルパン3世の世界のように思います
そして、弁護士の関与の有無は不明ですが
さすがに唆かすことはないと思いますので
警察が接見室のメンテナンスを怠り
警察が接見の状況の管理を怠った事件
なのではないかと思います
要は警察のミスだと思います
周辺住民の方は強い不安を感じているはずですので
二次的なトラブルが生じないよう
早期に被疑者発見がなされることを祈ります
なお、本件は
「逃亡のおそれ」のある被疑者に対して
適切な逮捕勾留がなされた事案だと思いますが
これを捜査機関が逆手にとって
「この被疑者のように逃走する可能性が高いから、こっちの被疑者も勾留請求」という発想や対応は
単なる捜査機関の傲慢です
逃走されない体制を構築することと
逮捕勾留の必要性判断の際の「逃亡の可能性」は
全く別の次元です
今後も不当な身柄拘束がなされないことを祈ります

 

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