【大田区議、預金口座を不正譲渡】どんな罪になる?
今週もいろいろなニュースがあったため若干埋もれていますが
結構重大な事件だと思います
現役の大田区議が、金融業者を名乗る男に200万円の融資を申し込み
その現金の振り込み名目でキャッシュカードを男に送り
さらに暗証番号を教えたという事件です
https://www.asahi.com/articles/ASLB34J9CLB3UTIL01Q.html
まず、このような行為にどのような犯罪が成立するかですが
これは犯罪収益移転防止法に違反することになります
条文を以下に添付します
やや長いので、重要なところを太字にします
【犯罪による収益の移転防止に関する法律】
第二十八条 他人になりすまして特定事業者(第二条第二項第一号から第十五号まで及び第三十六号に掲げる特定事業者に限る。以下この条において同じ。)との間における預貯金契約(別表第二条第二項第一号から第三十七号までに掲げる者の項の下欄に規定する預貯金契約をいう。以下この項において同じ。)に係る役務の提供を受けること又はこれを第三者にさせることを目的として、当該預貯金契約に係る預貯金通帳、預貯金の引出用のカード、預貯金の引出し又は振込みに必要な情報その他特定事業者との間における預貯金契約に係る役務の提供を受けるために必要なものとして政令で定めるもの(以下この条において「預貯金通帳等」という。)を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者も、同様とする。
2 相手方に前項前段の目的があることの情を知って、その者に預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同項と同様とする。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同様とする。
3 業として前二項の罪に当たる行為をした者は、三年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(第4項以下省略)
条文が難しくてわかりづらいですが
第1項
要は、他人名義の口座なのに、その他人になりすまして預金口座を利用しようという企みのもと、口座を譲り受けたら
1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、もしくはこれらを併せて課される
第2項
相手が、なりすまして預金口座を使うことを知りながら渡した場合も、
1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、もしくはこれらを併せて課される
他人名義口座の売買は
オレオレ詐欺のような犯罪行為の振込詐欺として使われますし
複数の口座を転々とさせることで、犯罪収益であることをごまかすことにも使われます
(いわゆるマネーロンダリング)
大田区議はこの第2項の嫌疑がかけられているのだと思います
※ なお、以前は【預金口座等の不正利用防止法】という法律があり
この法律で預金口座の譲受の罰則(罰金50万円のみ)が定められていましたが
平成20年の法律改正で、【預金口座等の不正利用防止法】は犯罪収益移転防止法に組み込まれ
そして罰則も重くなっています
大田区議としては
借金を借りるために迂闊にカードを送ってしまった
振り込め詐欺のような犯罪に利用されるとは思わなかった
と弁解するのでしょう
しかし、そもそも
相手方からお金を借りるのであれば、振り込んでもらう口座の口座番号等を伝えればいいだけです
カードを送る必要性は皆無です
しかも、お金を自分の口座に振り込んでもらう際、相手に暗証番号を伝える必要性も皆無です
そして、お金を借りようとしている相手は、ネットで集客している胡散臭い金融業者
いわゆるヤミ金や街金が、暴力団等の資金源になっているという程度の知識を
区議になられるほどの方であればお持ちであるはず
何が言いたいかというと
カードを送り、暗証番号を伝えた時点で
自身の預金口座が不正利用されることがわかっていたか
明確にわかっていないとしても、
その可能性があることを知りながら敢えて、カードと暗証番号を提供した
つまり、犯罪収益移転防止法第24条第2項前段の
「未必の故意がある」
と認定されるリスクは相当あるということです
本件のような口座譲渡という犯罪の場合
そのすべてが起訴され刑事裁判にされるわけではありません
また、大田区議は、党員資格停止処分を受け
今後もさらなる懲戒を受ける可能性もあります
このような社会的な制裁も受けていること等を踏まえて
起訴されないという判断は十分にあるかなとも思いますが
社会に与えた影響や
かなりの迂闊さという落ち度もありますので
今後の捜査機関の刑事処分等に注目していきたいと思います
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