【片山さつき地方創生担当大臣にあっせん利得処罰法違反疑惑?】わかりづらい法律を簡単に解説しました!

コラム

平成18年に甘利議員が

あっせん利得処罰法の疑惑(URに対する口利き)

で告発され、閣僚辞任したことは記憶に新しいですが

またしても現役大臣に対するあっせん利得処罰法違反の疑惑が

文春砲によって報じられました

 

『片山さつき地方創生担当大臣に100万円国税口利き疑惑』(文春オンライン)

http://bunshun.jp/articles/-/9365

 

【記事の内容】

報道によると

2015年(平成27年)、税務調査に入られ青色申告の承認が取り消されそうになった会社の社長X氏が

何とかならないかと元財務相官僚でもある片山さつき氏に相談したところ

私設秘書の南村氏(税理士)を紹介されたとのこと

 

そして、南村氏からは「大丈夫ですから安心してください」

などといわれ、税務調査の対応を依頼することにしたところ

片山さつき氏と南村氏の連名の「書類送付状」という書面にて

着手金100万円の支払請求がなされたとのことです

 

これに対し、片山さつき氏側は

税務調査対応の相談を受けたので、知り合いの南村氏を紹介しただけ

との認識であるとの回答をしているようです

 

【ブログの流れ】

これから、あっせん利得処罰法(正式名称:公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律)についての一般的な説明をさせていただき

それから、今回の報道を踏まえた犯罪成立の可能性と

捜査のポイントについて解説させていただきます

 

【あっせん利得処罰法とは?】

決して長い法律ではないので、そのまま引用します

アンダーラインが今回関連するところです

『公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律』

(公職者あっせん利得)
第一条 衆議院議員、参議院議員又は地方公共団体の議会の議員若しくは長(以下「公職にある者」という。)が、国若しくは地方公共団体が締結する売買、貸借、請負その他の契約又は特定の者に対する行政庁の処分に関し、請託を受けて、その権限に基づく影響力を行使して公務員にその職務上の行為をさせるように、又はさせないようにあっせんをすること又はしたことにつき、その報酬として財産上の利益を収受したときは、三年以下の懲役に処する。
2 公職にある者が、国又は地方公共団体が資本金の二分の一以上を出資している法人が締結する売買、貸借、請負その他の契約に関し、請託を受けて、その権限に基づく影響力を行使して当該法人の役員又は職員にその職務上の行為をさせるように、又はさせないようにあっせんをすること又はしたことにつき、その報酬として財産上の利益を収受したときも、前項と同様とする。
(議員秘書あっせん利得)
第二条 衆議院議員又は参議院議員の秘書(国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第百三十二条に規定する秘書その他衆議院議員又は参議院議員に使用される者で当該衆議院議員又は当該参議院議員の政治活動を補佐するものをいう。以下同じ。)が、国若しくは地方公共団体が締結する売買、貸借、請負その他の契約又は特定の者に対する行政庁の処分に関し、請託を受けて、当該衆議院議員又は当該参議院議員の権限に基づく影響力を行使して公務員にその職務上の行為をさせるように、又はさせないようにあっせんをすること又はしたことにつき、その報酬として財産上の利益を収受したときは、二年以下の懲役に処する。
2 衆議院議員又は参議院議員の秘書が、国又は地方公共団体が資本金の二分の一以上を出資している法人が締結する売買、貸借、請負その他の契約に関し、請託を受けて、当該衆議院議員又は当該参議院議員の権限に基づく影響力を行使して当該法人の役員又は職員にその職務上の行為をさせるように、又はさせないようにあっせんをすること又はしたことにつき、その報酬として財産上の利益を収受したときも、前項と同様とする。

 

あっせんというのは

議員としての地位を利用して、もしくはその権限の影響力を利用して

公務員に対して圧力を掛けたり、口利きをすることです

 

あっせんを行い、その報酬をもらうことに関しては

もともと、刑法にはあっせん収賄罪という刑罰があります

 

(あっせん収賄)
第百九十七条の四 公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。

 

この刑法上のあっせん収賄罪と

あっせん利得処罰法の違いは

簡単にいいますと

刑法=賄賂をもらって違法・不当なことをやらせた場合

あっせん利得処罰法=違法・適法、相当・不相当を問わず、ともかく口利きをしてお金などをもらった場合

という点にあります

内容の善し悪しが関係ないという意味で、あっせん利得処罰法の方が処罰範囲は広くなります

 

この法律は、政治家が公務員に対して口利きをしたり、圧力をかけるなどしたことの対価として

報酬(お金に限らず、広く財産上の利益)を受け取る行為を規制すべき

という世論を受けて制定されました

 

要は、権力を利用して公務員に働きかけがなされる結果

不平等な公務の運営や、公務に対する国民の信頼が損なわれるような事態は避けられるべき

と考えられたということです

 

刑罰の違いですが

 

公務者あっせん利得罪(1条)は

国会議員などの公職にある者が

請託(働きかけの依頼)を受けて

公職にある事の権限などの影響力を行使してあっせんをし

報酬を受け取ることが要件で

3年以下の懲役となります

 

議員秘書あっせん利得罪(2条)は

秘書(公設秘書、私設秘書いずれも含みます、平成14年改正)が

請託(働きかけの依頼)を受けて

公職にある事の権限などの影響力を行使してあっせんをし

報酬を受け取ることが要件で

2年以下の懲役となります

 

 

【どの罪に当たる?】

では今回の片山さつき氏のケースではどの罪に当たるかについて検討します

前提となる事実関係に争いがありますし

重要な部分がまだ明らかになっていないので、仮定的なものであることはご了承ください

 

① 片山さつき氏が南村氏に指示をして、財務省(税務署)に口利き等のあっせんを行った場合

 

この場合は、典型的な公務者あっせん利得罪になります

公務者ではない南村氏も、公務者あっせん利得罪の共犯者ということになります

 

記事に出てくるX氏の話を前提にした場合、このようなあてはめになるのではないかと思います

また、100万円の金銭請求を行った「書類送付状」という書面に

片山さつき氏の名前も連記されており、しかも議員会館の住所が記載されていることとも

この理解が一番整合性があるように思います

 

もし100万円が何らかのかたちで片山さつき氏側に流れているのであれば、

この図式であることを裏付けるのではないかと思います

 

 

② 片山さつき氏は南村氏を税理士として紹介しただけの場合
㋐ 南村氏が税理士として税務調査の対応を請け負った場合

 

片山さつき氏サイドはこの主張なのだと思います

この場合、あっせん利得処罰法違反にはなりません

 

知り合いの税理士を無償で紹介する行為は何ら犯罪になりません

そして、南村氏が税理士として税務調査対応を行うことも、何ら問題はありません

 

この主張にあたっては、

南村氏が依頼を受けた後、具体的にどのような職務執行を行ったのか

100万円をどのように処理したのか

という点が重要になってくると思います

 

しかも、「書類送付状」(片山さつき氏連名、議員会館の住所記載)

をどのように説明するのかという大きな問題が残ります

 

さらに、税務調査対応だけで着手金100万円もの金額を受領することの適否もありますし

青色申告の承認取り消しを告げられている段階で

南村氏がどのような業務を受任したのか(X氏にどのような説明をしたのか)

という点も非常に興味があります

 

 

㋑ 南村氏が片山さつき氏の名を利用して口利きやあっせんを行い、南村氏が100万円を収受した場合

 

この場合は、議員秘書あっせん利得罪になります

 

さらに、X氏に対して、あたかも自分に依頼をすれば

青色申告の承認取り消しを撤回させられる(ことは間違いない)かのように告げて

100万円を交付させたのであれば、詐欺罪(刑法246条、懲役10年以下)にもなり得ます

 

【捜査のポイントは?】

 

このように、本件をあっせん利得処罰法違反として捜査する場合

 

①片山さつき氏の主導であっせんを行い、100万円を収受したのか

②㋐片山さつき氏は単に南村税理士を紹介し、南村税理士が税理士業務として処理したのか

②㋑南村税理士が片山さつき氏の名を利用してあっせんを行い100万円を収受したのか

 

のいずれが真実であるかを、「書類送付状」、通帳履歴、領収証等の書証や

関係者供述により明らかにしていくことになると思います

 

そして捜査のポイントは

ⅰ 「書類送付状」に片山さつき氏の名が記載され、議員会館の住所が記載されていることをどのように説明するのか

 

ⅱ 南村税理士がX氏に具体的にどのような説明をし、依頼を受け、そしてどのような事務処理を行ったのか

 

ⅲ 100万円を(最終的に)取得したのが南村氏なのか、何らかのかたちで片山さつき氏に流れているのか

 

などではないかと思います

そしてやはり南村税理士がどのような供述をするのかがかなり重要になると思います

 

片山さつき氏も名誉棄損で文春を訴えるという姿勢のようなので

徹底抗戦の図式になるとは思いますので

引き続き、上記のようなポイントに注目して

この件を見守っていきたいと思います

 

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