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法律相談
警察が突然自宅を訪れ、夫が逮捕されました。しかし、夫は自分は罪を犯していないと言っていました。私も夫が罪を犯したとは全く信じられません。この後、一体夫はどうなってしまうのでしょうか?また、刑事は無実の人に対しても恐ろしく厳しい取り調べをすると聞いたことがあります。優しい性格の夫のことですので、このような取り調べを受けて、やってもいないことを言わされたりしないか不安です。何か打つ手はないのでしょうか?
弁護士からの回答
取調べではかなり過酷な取り調べがされることがあります。取り調べを受けた方には「黙秘権」がありますので、そのような取り調べを受けた場合でも、しゃべりたくないことがあれば「話したくありません」「黙秘します」と言えばよいのです。また、取り調べの際には調書が作成されますが、訂正を求めることができますし、押印を拒否することもできます。
解説
逮捕・勾留の期間
法律上、逮捕できる時間は最大で72時間と決められています。逮捕の期間終わると、次は勾留(こうりゅう)されます。勾留期間はまず10日間、それから勾留が延長された場合はさらに10日間、身柄を拘束されることになります。従って、逮捕されたら合計で23日間ぐらい身柄拘束は続くと覚悟する必要があります。警察署の留置場に入れられた方にとっては外界から遮断されているので、かなり長い期間に感じられます。これだけでも普通の人ならば参ってしまうでしょう。
面会の可否
逮捕がされても留置されている警察署に行って面会をすることができます。また、面会の際に衣服や現金等の差し入れをすることができます。ただし、「接見禁止処分」がされている場合には弁護人以外の人とは会うことができなくなりますし、手紙も原則として勾留期間中は届きません。これにより外界との連絡は、弁護士以外とは、殆ど遮断されることになります。従って、警察署に留置されている方にとっては更に酷な状況となります。なお、接見禁止処分がされていても、衣服等の差し入れを行うことは可能です。
過酷な取り調べ
取調べは相当厳しく、大声で怒鳴られることもあります。「てめぇこのやろう」とか、「警察をなめるなよ、ばかやろう」「どうせお前がやったんだろ。」「うそつくんじゃねえ。」というような類いの台詞も容赦なく浴びせられます。刑事は逮捕した人間を、真犯人だと思って取り調べをします。目の前の被疑者は憎き犯罪者なのだ、と自分に言い聞かせて取り調べをするのです。それゆえ、当然、厳しい取り調べとなります。ただでさえ外界と遮断された状況に身を置かれ、その上この様な取り調べを受けた結果、本来やってもいないことでも、やったと言わされることが多々あるのです。
黙秘権がある!
上記のような過酷な取り調べを受けても、しゃべりたくないことがあれば、「言いたくありません」「黙秘します」と言えばよいのです。(憲法38条不利益供述強要の禁止)「しゃべらない」理由も言う必要はありません。これは『秘権権』(しゃべらなくてもよい権利)と言い、逮捕された人に対して、日本の憲法・法律が当然に保障している権利です。警察は黙秘権があることを取り調べの前に本人に伝える義務があります。(刑事訴訟法198条2項)検察庁でもその後の裁判でも同じです。しかし、警察では、正確に『黙秘権があること』についてわかるように教えてくれず、逆に「正直に言え」「黙っていることは認めたと同じだ」「逮捕されたお前らに黙秘権などあるか」と、どなったりして、自白を強要することが多いのが現状です。
調書は刑事・検察官が作り上げる被疑者に不利なストーリーを書いた作文!
取り調べに応じて話したことを、刑事や検察官は調書という書面にまとめます。しかし、そこに被疑者にとって有利なことがかかれることはないと考えてください。刑事は被疑者を真犯人だと思っており、その被疑者を有罪にするための証拠として調書を作成しています。それゆえ、調書には、警察に有利に、つまり、被疑者に『不利益なストーリー』として構成されて書かれることが普通です。そのストーリーを被疑者が自らスラスラ取り調べに応じて話をしたかのような体裁となっているのです。近時,検事によって厚生労働省元局長の不正を裏付けようとして押収したフロッピーディスクのデータを改竄されるという事件がありました。その様な証拠改竄を行ったのは,検察庁のエリート検事です。また,この件は検察庁が組織的に行った疑いももたれています。このように,客観的証拠でさえ検察官は偽造するのです。彼らが作成する供述調書には被疑者にとって不利な虚偽の記載がされると考えて間違いありません。
納得いかない調書は署名押印を拒否してよい!
調書は、誤りがないかを確認させるために、被疑者に閲覧させるか又は読み聞かせなければなりません。上記で説明したとおり刑事や検事が作る調書は必ずしも正確ではなく、被疑者が犯人であるかのように記載されていることが常です。そこで、被疑者が記載の変更等を求めた場合は、その旨を刑事や検察官は調書に記載しなければなりません。つまり、誤った内容を訂正してもらう権利があるのです(刑事訴訟法198条4項)。納得がゆく訂正がなされるまで、署名押印を拒否してください。署名押印は法律的には、しさなければならないという義務はありません。断ることも法的には自由です。法的には、刑事や検事のほうが、あなたに署名押印をお願いできるだけなのです(刑事訴訟法198条5項)。
記憶にないことは「覚えていない。」と言う!
忘れてしまって記憶にないこと、特に日時は忘れています。そういう時は、とりあえず覚えていないことは「覚えていません」と言わなければなりません。調書には、あなたが『しゃべったとおりのことが書かれない』ことがよくあります。あとで「警察が勝手に書いた」と裁判で主張しても通らないことがほとんどですので、「調書をよく見せてほしい」と言って、見せてもらって、納得できなかったら、書名押印を拒否してください。たいがい取り調べの事実は『古い出来事』です。今、突然逮捕されたあなたの手元には、備忘のためのノートも覚書(メモ)も日記もありません。誰かに確かめることもできません。ひとつづつゆっくり思い出して、記憶にないこと、忘れてしまっていること、違っていることは、認めてはいけません。「そこは、よく覚えていません」と言うべきです。刑事や検事は「相手がこう言っているからこうだ」「共犯者はこう言っているぞ」と言って揺さぶりをかけてきます。しかし、そう言われても簡単に認めてはいけません。実際には、相手や共犯者が言ってもいないのに、取調官がうその説明をすることがよくあります。
すぐばれる嘘の言い訳はしない!
逮捕するまえに、あるいは逮捕後、警察はすでにほとんど万全の下調べをやっています。ウソを言えば、警察には何人も捜査官がいますから、すぐに裏付けの捜査をされてウソがばれることになります。ウソを言ってつじつま合わせをするくらいなら、あなたには『黙秘権』があるのですから、「私はしゃべりたくありません」と言うべきです。
弁護士に依頼した場合
(1) 直ちに接見に赴きます
弁護士に依頼すると、真っ先に被疑者・被告人のもとに接見(面会)に赴きます。刑事弁護は時間との勝負です。弁護士の到着が遅れたために、その間、違法な取り調べによって不利な調書が作成されてしまうことがあることは、これまでのえん罪事件の歴史が物語っています。また、『面会禁止の処分』(接見禁止)がなされている場合は、原則として弁護士しか被疑者と面会することはできません。弁護士によるいち早い接見こそが、重要なのです。
(2) 防御方法や刑事手続等を説明します。
上記で説明した黙秘権や調書への署名押印拒否等の重要な権利は、普通の方はご存じないのが現実です。また、警察でも一応の説明がなされますが、形式的な説明に過ぎず、実質的な防御の方法を理解させることはありません。そこで、弁護士が、早期に接見に赴き、自分の権利を守るための権利や方法を丁寧に説明し・理解させます。黙秘権等の知識及び使い方を理解すれば、逆に「正直に言え」「黙っていることは認めたと同じだ」「逮捕されたお前らに黙秘権などあるか」と、刑事に怒鳴られても、冷静に対応することができます。
(3) 身柄拘束からの解放を目指します
被疑者が理由もなく逮捕・勾留されている場合、弁護士はその被疑者を解放する求めることができます。逮捕された後、弁護士は警察官に対して被疑者を解放するように要請し、被疑者を勾留しないように要求することができます。これにより、勾留されずに、釈放されることもあるのです。また、勾留されてしまっても、勾留決定に対して異議を唱えます。この異議申し立ては準抗告といい裁判所に対して不服を申立てます。弁護士は書面を作成し、裁判官に対して、本件の勾留には勾留の理由も必要性もないことを具体的に主張することになります。その他にも、勾留後の弁護活動としては、検察官の裁量に基づく身柄解放を期待して、できるだけ早期の釈放を行うよう検察官に書面を提出して要請したり、裁判所に勾留の取消しまたは執行停止を求めたりすることが考えられます。
(4) 不起訴・刑事裁判に向けて証拠収集等の準備活動をします。
逮捕・勾留されたらすぐに、身柄の解放、不起訴及びその後に続く刑事裁判で無罪判決を勝ち取るための準備活動を行います。具体的には、被疑者にとって有利な物的証拠を保全し、又は、第三者の話を録取するなどして、証拠固めをします。この様な証拠収集を起訴された後に行うのは遅すぎます。刑事や検事は、逮捕前から国家権力を背景に証拠固めを強制的に行っています。それに対抗するするためには、早期の準備活動が重要であることは言うまでもありません。
(5) 不起訴を勝ち取ります。
刑事裁判における有罪率は99%以上です。つまり、刑事裁判になると、99%有罪となっているのです。しかし、この事実は、裏を返せば検察官は「100%勝てる」と判断できる事件だけを起訴しており、証拠関係等からして「100%勝てる」と判断できない事件については、起訴を見送っているのです。事実、平成20年のデータ(犯罪白書)によれば、検察庁の終局処理のうち、56.7%が起訴猶予・不起訴となっています。そこで、刑事弁護としては、被疑者に黙秘権等をアドバイスして不利な供述を調書にさせず、その他有利な証拠を収集する等して、検察官が「100%勝てる」と判断できない状況をつくりだせば、起訴を免れることができるのです。具体的には、証拠を収集し、起訴をするべきではない旨の意見書を検察庁に提出し、場合によっては検事と交渉して起訴をさせないようにします。
(6) メンタル面をサポートします
黙秘権や調書への署名・押印の拒否等により適切な防御活動を行うと、刑事はさらなる圧力をかけてきます。「そんなことを言っていると不利になるぞ」「黙っているのは、お前がやったからだろ。」「黙っていると、とんでもない目に遭うぞ。」「弁護士の言っていることが正しいと思っているのか?」等怒鳴り散らし、被疑者に無理矢理不利な供述をするように求めてくるのです。このような不当な圧力を受けると、いくら黙秘権等の正確な理解があっても、最終的にものを言うのは精神力です。被疑者は、警察署に留置され、外界から遮断された中で、上記のような激烈な取り調べを受けますので、精神的なサポートは不可欠です。このようなサポートをできるのは、接見禁止がなされている場合は特に、弁護士だけです。
当事務所における解決例
(1) 痴漢冤罪事件で不起訴
事案は,ラッシュアワーの通勤満員電車内で,痴漢をしたというものでした。 依頼者は,事件当初から,自分は犯人でないと述べていましたが,取り調べ担当副検事より「犯人はお前しかいない」等の脅迫とも言える取り調べを受けていました。困り果てた依頼者が,そのご家族を通じて私の下へご相談にいらし,当事務所にて受任することとなりました。 以降,無事釈放されるまで,毎日接見に赴き,依頼者の供述の記録化(弁護人面前調書の作成),身柄拘束に対する不服申立(準抗告),副検事の取り調べ調書への署名・捺印拒否,当該事件現場の確認・撮影・調査等の弁護活動を継続的に行って参りました。 その結果,勾留満期日において,不起訴・釈放を勝ち取りました。 依頼者は晴れて自由の身で,迎えに来てくれたご家族と共に,笑顔で自宅へ帰っていきました。そして,後日,私の方から勤務先へ無実の罪で捕らわれていたことを説明し,従前どおり仕事に復帰し,現在は平穏な生活を取り戻しています。
(2) 迷惑条例違反事件で勾留却下
事案は,駅構内で,女子高生のスカートの中を盗撮したというものでした。依頼者は,都内の一流企業に勤めるサラリーマンでしたが,魔が差してそのような行為を行ってしまいました。ただ,本件が初犯であり,常習的にそのような行為を行っていたわけではなく,逮捕当初から事実関係を認めて反省をしていました。しかし,そのままでは,原則10日間の勾留がなされてしまう状況でした。逮捕から拘留されるまでが約2日間,その後勾留されてしまうとさらに原則10日間は社会に戻れません。2日間くらいであれば,勤務先にも「急病」などと告げて本件の発覚を押さえることができますが,さすがに10日間欠勤する場合は,本件が勤務先に発覚するおそれが非常に高まります。会社によっては私生活でも犯罪行為を行った場合は解雇理由となる場合があり,会社をクビになることがよくあります。その様な状況下,逮捕後勾留前に依頼者のご家族より深夜,当事務所にご連絡がありました。連絡を受け,翌朝直ちに弁護活動に着手しました。接見により事実関係を確認するほか,勾留を回避するための材料を収集し,担当検察官に勾留請求をしないよう説得しました。にもかかわらず,担当検察官は,この種事案は厳罰に処すべきとの考えから,勾留請求を強行しました。そこで,勾留回避のための資料を整え,裁判所に提出し,勾留請求を却下するよう意見書を提出したところ,無事に勾留が却下されました。依頼者は,無事2日間だけで釈放され,勤務先にも本件を知られることもなく,無事に社会生活に復帰しました。もし,勾留された場合,会社を辞めざるを得なくなることは必至であり,そうだとしたら,依頼者及び家族の人生は大きく変わってしまうところでした。
(3) 窃盗事件で不起訴
事案は,20代前半の青年が,書店で万引きをしたというものでした。 その青年は,当初より犯行を認め反省をしていました。もっとも,それだけでは勾留期間が延長され起訴されてしまう恐れがありました。そこで,当事務所にて,被害者である書店の店長に会い,青年が反省している事を伝えたうえで被害額を弁償した結果,示談をすることが出来ました。示談の中で,被害者の店長は,青年を許す旨も表明していただけたので,その示談書と共に,不起訴処分が相当である旨の意見書を検察庁に提出した結果,起訴猶予処分となりました。青年は,勾留10日で釈放され,元の生活に戻ることが出来ました。また,起訴猶予となったため,前科が残ることなく,前途有望な青年の将来への支障も取り除くことができました。
(4) 傷害事件で不起訴
事案は,30代前半の青年が,交際相手と別れ話をしていたところ,口論となり,その際,被害者女性が転んだ際に怪我をしたというものでした。 その青年は,当初より犯行を認め,また相手方女性を結果的にではありますが怪我をさせてしまったことについて反省をしていました。もっとも,それだけでは勾留期間が延長され起訴されてしまう恐れがありました。そうなった場合,更に原則として少なくとも裁判が終わるまでは社会に復帰することができません。その様な事態になれば,勤務先をクビになり,社会復帰がより困難になります。そこで,当事務所にて,被害者である女性と会い,その女性の心情にも配慮しながら,青年が反省している事,もう二度とその女性には近寄らないこと等を伝えたうえで被害額を弁償した結果,示談をすることが出来ました。示談の中で,被害者の女性は,青年を許す旨表明していただけたので,その示談書と共に,不起訴処分が相当である旨の意見書を検察庁に提出した結果,起訴猶予処分となりました。青年は,勾留10日で釈放され,元の生活に戻ることが出来ました。また,起訴猶予となったため,前科が残ることなく,前途有望な青年の将来への支障も取り除くことができました。