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私は、出版関係の会社に正社員として勤務しています。私の賃金額は、基本給30万円、家族手当4万円、住宅手当4万円、通勤手当2万円の合計40万円です。しかし、会社は、業績悪化を理由に、今年7月分の賃金40万円のうち8万円、及び8月分の賃金40万円のうち10万円の支払いをしてくれませんでした。会社からは、9月分からは全額支払うから、7、8月分の未払い分の賃金(合計18万円)については我慢して欲しいと言われています。会社の言い分に従い、泣き寝入りする以外にないのでしょうか?

”弁護士からの回答”

弁護士からの回答

賃金を、会社が一方的に減額して支給することは原則として許されません(全額払いの原則。労基法24条1項)。会社が業績悪化を理由に、真っ先に手当部分をカットすることがありますが、手当であってもカットされれば生活に大きな影響が生じます。労働者は、会社に対し、未払いの賃金額、及びそれに対する(賃金支払日の翌日から)支払い済みまでの遅延損害金の請求が可能です。

解説

賃金未払いについて

就業規則等で支給することが定められていれば、各種の手当も賃金に含まれます。そして、賃金を、会社が一方的に減額して支給することは原則として許されません(全額払いの原則。労基法24条1項)。会社が業績悪化を理由に、真っ先に手当部分をカットすることがありますが、手当であってもカットされれば生活に大きな影響が生じます。労働者は、会社に対し、未払いの賃金額、及びそれに対する(賃金支払日の翌日から)支払い済みまでの遅延損害金の請求が可能です。労基法120条1号では、賃金の全額払いの原則に違反する行為に対し、30万円以下の罰金を科すことができる旨定めています。

 

賃金未払の対応方法

(1) 証拠の収集

まずは、労働契約の存在や賃金額を裏付ける資料をすみやかに収集する必要があります。資料としては、労働契約書、就業規則の賃金規定、給与明細、銀行預金通帳(賃金が銀行振込みの場合)などが考えられます。退職金の不払いの場合は,退職金規程,就業規則,労働協約等が考えられます。但し,退職後にこれらの資料を収集するのは難しいので,出来るだけ退職前に収集し,退職後は元同僚の協力を得るなどして収集しましょう。

(2) 会社との交渉

まずは,会社に任意に支払うよう請求しましょう。それでも会社がなかなか応じてくれない場合は、労基署(労働基準監督署)を利用する方法があります。労基署に申告すると、労基署が会社に対し調査を行い、その結果、勧告がされて、会社が支払いに応じることもあります。労基署は全国に点在しており、例えば、千葉県の場合、千葉、船橋、柏など8か所に設置されています。各労基署には管轄地域がありますので、会社の住所地を管轄する労基署を利用するとよいでしょう。

(3) 裁判

交渉や労基署の利用で解決しない場合は、裁判所を通じて、解決を図ることが考えられます。具体的な方法としては、労働審判,訴訟、資産保全のための仮差押え、先取特権(例えば、給料につき、他の債権者に先立って、使用者の総財産から優先的に弁済を受けることができる権利のこと)に基づく差押え・配当要求などがあります。請求額が60万円以下の場合は、簡易裁判所での少額訴訟の利用が可能です。少額訴訟は、原則として1回の審理のみで判決が下されるという簡易迅速な手続です。ただ、期日までに充分な証拠を準備しなければならず、また、その証拠の種類についても制限がありますので、十分な注意が必要です。また、労働審判を利用すれば、短期間(原則3回以内の審理を経て決定が下されます)で紛争が解決できる可能性があります。

弁護士に依頼した場合

(1) あなたに代わって、証拠収集や会社との交渉を行います。

あなたの事案にとって必要な証拠を把握し,あなたと協働して、証拠収集を迅速に行います。また、弁護士が法的な根拠を示し,証拠を揃えて請求した場合,それまで交渉に応じてくれなかった会社側が態度を変え、交渉に応じてくれることもあります。

(2) あなたに代わって、裁判を起こします。

会社側が任意に要求に応じない場合は、裁判所を通じて、解決を図ります。裁判手続の書類は,事実関係及び証拠を整理し,法律の要件事実に沿って作成する必要がありますが,これらを最も的確に作成できるのは弁護士です。また,あなたのケースにもっとも適した裁判手続を選択し、あなたの要求の実現を目指します。例えば、会社が倒産したような場合、会社資産保全のための仮差押えとともに先取特権に基づく差押えを早急に行えば、賃金債権を回収できる可能性が高まります。